■この映画のストーリー
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時は1916年、ロシアのロマノフ王朝が王政300年を祝う祝宴を行っていた。ロマノフ王朝最後の皇帝であるニコライ2世の娘、アナスタシアは、その祝宴で祖母であるマリー皇太后にオルゴールをプレゼントされる。オルゴールを開ける鍵はペンダントになっており、そこには「パリで会いましょう」と刻まれていた。しかし、華やかな祝宴会場は、ラスプーチンの登場で一変してしまう。彼は追放処分を受けたことを恨み、その復讐をするために魂を悪魔に売り渡して、ニコライ2世とその一族を滅ぼす呪いをかけたのだ。そうしてロシア革命が起こり、宮殿に市民が流れ込んで暴動が起きる。アナスタシアと皇太后はすんでのところを1人の少年により救い出され、命は助かるが、2人は逃げる途中ではぐれてしまう。こうしてロマノフ王朝は滅び、ニコライ一家は離ればなれとなったのである。
10年後、サンクト・ペテルブルグには噂がたっていた。「皇女アナスタシアは生きている」と。また皇太后がアナスタシアを見つけた者に破格の報奨金を支払うとの噂も流れ、詐欺師のディミトリとその仲間ウラジミールはそれを目当てにアナスタシア役をこなせる少女を探していた。そして彼らはアナスタシアにそっくりなアーニャという孤児に出会う。おもしろいことに彼女には幼年期の記憶が無く、出生の秘密を握る唯一の手がかりは、胸につけた「パリで会いましょう」という文字が刻まれたペンダントだけだった。うまい具合にアナスタシアを演じる娘が見つかったとほくそ笑むディミトリ。アーニャは失われた過去と自分の家族のことが知りたいがためにパリ行きを望み、ディミトリにうまく言いくるめられてしまう。こうしてアーニャ、ディミトリ、ウラジミールの3人はパリに向けて共に旅に出ることとなるのであった。
ディミトリとウラジミールが、アーニャに彼女が本物の皇女らしくなるための教育をほどこしながら、一行はパリに向かう。順調に見えたパリ行きだが、死んだはずのラスプーチンが、アナスタシアが生きていたことで、王家滅亡の呪いが成就されていなかったことを知って復活を果たし、パリへの旅路を様々な邪悪な方法で妨害する。そんな策略を一行はなんとか乗り越えていくのだが、ディミトリとアーニャは互いに惹かれあうという新たな問題も抱えていく。
パリに着いて早速、アーニャには皇太后と会うにあたっての尋問が行われる。数々の質問に対する答えを教えられていたため、アーニャは順調に質問に答えていく。ところが、最後の質問だけはウラジミールもディミトリもまったく予期しないもので、ここまでの苦労がすべて水の泡になるかと思いきや、アーニャは簡単にその答えを言い当ててしまう。その問いかけの答えこそ、彼女が本物のアナスタシアであることを証明するものであり、ディミトリの心に衝撃と新たな決意を与えるものであった。
こうしてアーニャは皇太后に会うことになるのだが、ラスプーチンがそんなアーニャを放っておくわけがなかった。ラスプーチンの呪いの結末はどうなるのか? オルゴールが結ぶアーニャ、皇太后、ディミトリの3人の関係は?
実在した歴史や人物をアニメーション化するにあたり、難しいのはいかにして作品に魂を吹き込んでいくかである。この映画では、コンピューター・グラフィックスという新たな製作手法で、今までの色彩制限から解放された繊細さと華やかさを極限まで追求して、見るものにより大きな芸術的感動を与えることに成功している。特に豪華絢爛なパーティーの描写などは、ためいきが出るような素晴らしさだ。また、アニメーションの場合、声優の果たす役割も大きい。主人公アーニャ/アナスタシアの声を務めた女優メグ・ライアンは、愛らしさとウィットに富んだアナスタシアの魅力を上手く引き出している。彼女以外にこれほど上手くアナスタシアに魂を与えることのできる女優がいるだろうか。彼女だけにとどまらず声優にはハリウッドのスター達が集まっており、彼らの個性はセリフを通して表現されている。フォックス・アニメーション・スタジオが、調査と製作に3年もの月日を費やしたこの壮大な作品に、あなたはきっと圧倒されることだろう。
製作・監督は、ドン・ブルースとゲイリー・ゴールドマンの2人。2人はディズニー・スタジオでアニメーションの製作に携わっていたころからのパートナーで、1979年に独立してプロダクションを設立。テレビ・アニメ
"Banjo, The Woodpile Cat"(1979)や映画『アメリカ物語』(86)、『サンベリーナ・おやゆび姫』(94)、など、数々のヒット作を生んできた。製作総指揮のモーリーン・ドンリーも、ディズニーでの長い経験を経てこの作品に参加。これまで、アメリカのアニメーションはディズニー一色だったが、現在はこうして、ディズニーの製作者が、独立し、ディズニーとはまた違う魅力のあるアニメ製作を行うようになった。また、映像はコンピューター・グラフィックスにより、さらにリアルで鮮やかに描かれている。これからのアニメーション映画の躍進に期待したい。
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編集部 |
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■この映画の英語について
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舞台設定はロシアからフランス。しかし、主に会話に使われるのは、なぜか英語、それも標準米語である。ここではどうしてかなどと細かいことは詮索せずに、純粋にこの映画の英語について論じてみたい。会話自体は明瞭で、とくに主演2人のメグ・ライアン、ジョン・キューザックの声は、はっきりとしていて聞き取り易い。1人だけ例外なのはラスプーチンである。しかし、それも彼の声が『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のドク役、『アダムス・ファミリー』のラーチ役のクリストファー・ロイドということを考えれば、このちょっと奇抜なしゃべり方も納得できる。
歌も数多く挿入されている。この部分は取っつきやすいが、実は速度も速く、イントネーションも普通の会話とは少し違うため、意外と難しい。だが、何と言ってもそこは「好きこそものの上手なれ」で、軽快で陽気なナンバー“A
Rumor In St. Petersburg”など自然に耳に残る曲は、すぐに口ずさめるようなるので、臆せずトライしてもらいたい。
この映画ではとくに注目して欲しい点がひとつある。映画ファンならご存じだろうが、諸外国で映画が公開される場合、日本よりも厳しくまた詳細に観客を制限するレイティングがつけられる。例えば、アメリカ映画ではNC-17(17歳未満入場禁止)、PG(保護者同伴が望ましい)、PG13(13歳未満の子供には保護者同伴)、G(一般向き映画)...などがある。これには、暴力的なシーン、性的なシーンがどれだけ含まれているかだけでなく、そこに使われている言語も規制の対象になる。つまり、最上級の卑語
fuck などがセリフに含まれる映画が誰でも見られる一般向き映画になることはないのである。
この映画はアニメーションということで、子供が見ることを対象としており、当然ながらレイティングは G、卑語は使われていない。では、つい卑語を使ってしまいそうな表現を、いかに使わないで表現でするのか。驚いたときの表現を例にとってみよう。分かりやすいところでは、日本人にもおなじみの
Oh, my God. がある。だが、God は個人のものではなく、my God とすることは敬虔な人に対しては神への冒涜ととられる。映画でもよく耳にするし、驚いたときなど口癖の用に連発する人もいるが、日本人が調子に乗って使うことは煙たがられることが多いので注意が必要。この映画では
God ではなく、驚いたときは Oh, brother. や Oh, boy. などといった表現が使われている。
ほかにも、毒づいたときなどに発する What the heck. という表現は、普通の会話では heck の代わりに hell
などが使われることが多い。卑語度合いのそれほど高くない hell に対しても婉曲語の heck を使うなど、言葉にもかなり気を使っていることがうかがえる。公の場で英語を使う際には、卑語を避けた表現を使えることも大事。こういった英語も、ぜひこの映画で学んでいただきたいところである。 |
編集部 |
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■目次
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1. |
The Music Box |
オルゴール |
……………… |
8 |
2. |
The Plan |
計画 |
……………… |
20 |
3. |
Audition |
オーディション |
……………… |
34 |
4. |
Rasputin's Return |
ラスプーチン復活 |
……………… |
52 |
5. |
Minions |
ミニオン |
……………… |
64 |
6. |
The Training |
教育 |
……………… |
82 |
7. |
The Romanov Curse |
ロマノフの呪い |
……………… |
94 |
8. |
Paris |
パリ |
……………… |
108 |
9. |
The Empress |
皇太后との再会 |
……………… |
122 |
10. |
Home At Last |
旅の果てに |
……………… |
138 |
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■コラム
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ロマノフの悲劇 |
……………… |
106 |
St.Petersburg |
……………… |
107 |
パリまでの道のり |
……………… |
120 |
ラスプーチン |
……………… |
136 |
声優とキャラクター |
……………… |
154 |
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■リスニング難易度
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評価項目
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易しい(1)
→ 難しい(5) |
・会話スピード
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・発音の明瞭さ
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・アメリカ訛
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・外国訛
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・語彙
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・専門用語
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・ジョーク
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・スラング
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・文法
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合 計 |
13点 |
( 16以下 = Beginner, 17-24
= Intermediate, 25-34 = Advanced,
35以上 = Professional )
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