■この映画のストーリー
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弁護士のサム・ボーデンは妻リーと娘ダニーに囲まれ普通の暮らしをしていたが、そんな彼の前に一人男マックス・ケイディが現れ、彼の生活は一変する。ケイディは14年前の事件で弁護人のサムが重要書類を握りつぶした事が原因で自分が刑務所に行く羽目になったと考えサムへの復讐を開始したのだ。サムにつきまとうケイディに不安を感じ始め、何らかの手を打とうと州一番の刑事弁護士ヘラーに電話しようと手を伸ばした瞬間に、飼い犬が何者かに殺されたと電話が入る。ケイディの犯行だと疑わぬサムだが警察も証拠が何もないので、手の出しようがない。それを尻目にケイディはサムの同僚女性ローリーをこの女性が裁判所に働く立場から訴えないと計算ずくで暴行レイプする。
法に触れないケイディに対しサムは私立探偵カーゼックに依頼して事態の解決を試みるが、その隙をついてサムの娘ダニーにまでケイディの手が及ぶ。覚悟のできたサムは、カーゼックにケイディを痛めつけるためのチンピラを雇わすが、反対にケイディにその連中がやられてしまう。カーゼックに見限りを付け、もう一度刑事弁護士ヘラーの世話になろうと電話するが今度はすでに彼はなんとケイディに雇われていた。そのうえ仏心とケイディに忠告した言葉を録音されていたことで、裁判ではサムの方が悪者になってしまう。
もう後のないサムはカーゼックと相談し、サムが留守であるように見せかけて、ケイディを家に忍び込ませ、不法侵入したころを殺す手段にでる。しかし罠を張り巡らし銃を持って待ち構えるカーゼックが逆にケイディの罠に掛かり殺される。サム達はひたすらケイディから逃げるべく、ケープ・フィアーへと向かうが、果たしてその魔の手から逃れる事は出来るのであろうか…
この映画でとにかく舌を巻くのは、ケイディの頭の良さである。聖書、文学、法律に精通し、彼の行動は全て計算ずくで、弁護士サムは何から何まで歯が立たない。これだけのことが出来るなら復讐などを考えずに、このエネルギーを正の方向に向ければ、何事も成せるのではないかと思わせるが、逆に言えば、こんな男に狙われることほど恐いものはないという事だ。ご承知の通り「恐怖の岬」(1961)のリメイクである。前作では、リー・ヘラー役のグレゴリー・ペックがサム、エルガート役のロバート・ミッチャムがケイディを演じていた。
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■この映画の英語について
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ケイディの南部訛りの話し方が、恐さを引き立てている。冒頭で仰々しいイレ墨を披露し、刑務所から出てくる時、"What
about your book?"(本はどうした)と看守に聞かれて "Already read 'em."(もう読んだ)と答えるのであるが、南部訛りに聞き慣れない者にとってはすでに「えっ」と思うぐらいの発音で、彼の不気味さが伝わってくる。
この映画には日本人に難しい英語的表現が出てくる。サムとリーの夫婦喧嘩で、昔サムが浮気をしたことを言い争い、サムはリーが一日中泣き続け何もせず
"You wouldn't leave the bedroom."(ベッドにこもりっきりだった)と言えば、リーは "Yeah,
I wish you could say the same."(ええ、あなただったら良かったのに)→(あなたが部屋にこもりっきりなら浮気もできなかったのに)と答える。サムが話したことを受けたもので、これ単体では意味が取れない。
これによく似た例がケイディと探偵カーゼックの会話にも登場する。カーゼックがケイディを脅してこの町から出て行けと言った後、ケイディはカーゼックに逆にこう返す。"You
a cop? Or were you a cop? Or were you not good enough to remain
on the force?(警官か? 元警官か? それとも警察に残れるほど、いい腕じゃなかったのか?)続けて "Cause you
know what? That's the feeling I'm gettin' here."(そうだろうな、俺はそう感じるよ)→(俺はあんたが警察に残れるほどいい腕じゃなかったと感じるよ)これは自分のセリフを受けている。これも後ろの部分だけを見ても意味が取れない英語的表現である。
出番は少ないが、前作「恐怖の岬」に出ていた二人、エルガート警部とリー・ヘラー刑事弁護士の話し方が非常にカラフルで面白い。まずサムの犬が殺されエルガートに依頼してケイディを尋問する時に、エルガートはサムに向かって、ケイディを少し脅してやれば
"He'll feel about as welcome around here as a case of yellow fever."(黄熱病ぐらい歓迎されていると感じる)→(ケイディはお呼びじゃないことが分かるだろう)と言うが、かなり凝った表現である。それに対し、ケイディに弁護士として雇われたリー・ヘラーも、法廷で判事に話す時、"Just
as God arose to judgment, to save all the meek of the Earth, I hope
and pray you will do the same, sir."(神が地球にいる弱きを助ける裁きを下されたように、裁判長の判決がなされることを望み祈っています)と不要な言葉が多く含まれた、負けず劣らずの表現をする。この他にも彼らは面白い表現を使うのでじっくり味わって頂きたい。
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■目次
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1. |
恐怖の男 |
Max Cady |
……………… |
7 |
2. |
葬り去られた過去 |
The Buried File |
……………… |
18 |
3. |
犬殺し |
The Dog Killer |
……………… |
30 |
4. |
盲点 |
A Painful Mistake |
……………… |
39 |
5. |
悪循環 |
Digging Up the Past |
……………… |
49 |
6. |
プレクサス・ネクサス・セクサス |
Plexus, Nexus and Sexus |
……………… |
67 |
7. |
病院送り |
The Hospital Job |
……………… |
77 |
8. |
抑止命令 |
The Restraining Order |
……………… |
85 |
9. |
罠 |
A Trap |
……………… |
93 |
10. |
ハウスボート |
The Houseboat |
……………… |
105 |
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■コラム
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前作「ケープ・フィアー」について |
……………… |
17 |
ロバート・デ・ニーロについて |
……………… |
38 |
マーティン・スコセッシ監督 |
……………… |
66 |
トーマス・ウルフ, ヘンリー・ミラー |
……………… |
84 |
南部の恐怖 |
……………… |
92 |
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■見本ページ
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(画面をクリックすると詳細画像になります) |
■リスニング難易度
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評価項目
| 易しい → 難しい
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・会話スピード
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・発音の明瞭さ
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・アメリカ訛
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・外国訛
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・語彙
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・専門用語
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・ジョーク
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・スラング
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・文法
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合 計 |
20点 |
( 16以下 = Beginner, 17-24 = Intermediate, 25-34 =
Advanced, 35以上 = Professional )
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