■この映画のストーリー
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不気味に静まりかえった月面の荒野に一つの影が落ち、1969年にグレーの細微な砂地につけられた人類初の2組の足跡が吹き飛ばされる。画面に食いいる我々の心をときめかすその正体が何であれ、それは限りなく巨大なものだ。地球の空のあらゆる動きを監視するペンタゴン戦略室の調べでは、直径550km、質量はなんと月の1/4にも及ぶという。突如として人類の前に現れたこれほどまでに巨大な空飛ぶ物体とは一体何か。気まぐれに宇宙の海を駆け抜ける隕石なのか。我々の惑星を侵略する目的で900億光年ものかなたから銀河
の海を渡ってやってきた知的生命体、ウエルズ(H.G.Wells,1866〜1946)がSF小説『宇宙戦争』(War of the
Worlds,1898)で描いたエイリアンの末裔なのか、それともスピルバーグ(Steven Spielberg,1946〜
)の『E.T.』(E.T.,1982)の子孫だろうか。間もなくこの巨大な未知の物体から36艘の宇宙船が吐き出され、世界中の大都市の上空にのしかかるように浮かんだとき、我々は驚異と期待、そして不安の入り交じった複雑な思いを抱いて空を見上げる。 だが、そんななか衛星放送テレビ局で働く優秀な技師、Jeff
Goldblum
演じるデイヴィッドが背筋の凍るような発見をする。宇宙からの未知の訪問者たちは我々の衛星を使って互いに意志の疎通を図りながら、戦略的に地球の重要な地点に宇宙船を配備して、人類に一斉攻撃を加えるべくそのタイミングを計っているというのである。しかもカウント・ダウンまで人類に残された時間は僅か7時間、危険はすぐ目前に迫っている。大統領報道官とし
て働いる Margaret Colin
扮する彼のかつての妻コニーに急いで電話を入れるが、離婚のいきさつの蒸し返しかと勘違いされ、話の途中で切られてしまう。しかたなく、愛用のラップトップ・コンピュータを手にオフィスを飛び出すと、年老いた父親ジュリアスを運転手にワシントンへと車を飛ばす。この頃になると、エイリアンはその恐るべき本性を表し始めていた。デイヴィッドが
Bill Pullman
演ずる合衆国大統領ホイット"アに最後の審判についての私見を披瀝していたとき、国防総省が新来の客に送ったヘリコプター、ウエルカム・ワゴンが宇宙船から放たれたグリーンの光線を浴びて暗黒の空で飛散した。人類に対する好意的なエイリアンとの遭遇といった80年代を支配したロマンティックな夢を粉々に打ち砕くこのおぞましい反応こそが、彼らの偽らざる解答だった。国民が大パニックに陥ることを恐れ、ワシントンにとどまっていた大統領は、今やデイヴィッドの推論の正しさと人類が滅亡の危機に瀕していることを実感し、国民に大都市からの避難命令を発動するや自らも大統領専用機へと駆け込んでいく。その瞬間、世界各地の宇宙船から一斉に目もくらむ白光が迸り、想像を絶する破壊力であらゆるものをなぎ倒す。灼熱の炎は嵐となって建物という建物をなめるように焼きつくしていった。人類が長い歳月をかけて営々と築いてきた堂々たる大都市はまたたく間に粉砕され、破壊され、そして焼きつくされてこの地表から姿を消した。 今こそ人類は本気で怒り、立ち上がるべきときだ。大統領は残った戦力をかき集め、宇宙船に対して反撃を指示。だが人類の攻撃は彼らのテクノロジーの前では全く無力、更なる悲劇が後に続くに過ぎなかった。エイリアンの宇宙船には目に見えぬ保護シールドが張りめぐらされているばかりか、そこから飛び出してくる無数の小さな攻撃艇までも、そのシールドで守られていた。合衆国海兵隊が誇る戦闘機集団はおろか、世界で最も安全な場所と云われるシャイアン・マウンテンの地下深くに設けられたハイテクの聖域NORADでさ
えも瞬時のうちに消滅したのだ。エイリアンの執拗な追跡を振りきった腕ききのパイロット、Will Smith
演じるスティーヴン・ヒラー大尉のみが生き残り、エイリアン1匹を生け捕りにして、たまたま近くを通りかかったトレーラーの集団を伴って伝説の場所エリア51へと向かっていく。大統領でさえその存在を知らされていなかった秘密のベールに包まれたこの軍事研究施設には、1950年代にニュー"キシコで墜落したと云われる攻撃艇とエイリアンが収容され、オークン博士率いるチームによって長年、調査研究がなされていた。もし人類が、僅かではあるが残存する世界中の戦力を結集できれば、エイリアン攻撃艇の操縦法と保護シールドを破る方法を見つけ出せれば、人類はこの地球という尊い惑星を救うことができるかも知れない・・・・・ 人種、宗教、あるいはイデオロギーの違いを越えて人類が一致団結し、生きる権利を賭けてエイリアンと繰り広げるこの壮絶な戦いは、しかし、ア"リカ建国の精神を死守する個人の戦いでもある。我々の過去の歴史が教えるように、時として威圧的になる社会に対する「誰しもが有している生命、自由、そして幸福を追求する権利」を求めての個人の戦いであり、自らの存在証明の戦いなのだ。そういえば、世界のリーダーたる合衆国大統領が立場を忘れ、自ら戦闘機に乗り込んで一見不可能とも思える空戦に挑むのは、彼がかつて戦闘機のパイロットだったという、ただそれだけの理由からでは決してない。若き理想主義者と讚えられた彼も今や支持率は地に落ちて、マスコミからは「戦士を選んだと思ったら、とんでもない弱虫だった」とまで揶揄される有様である。だからこそ彼はこの戦いを通して指導者としての真価を何としても証明して見せねばならないのだ。エイリアンの母船にコンピュータ・ウィルスを植えつけるために彼らの攻撃艇に乗り込んで大気圏外へと飛び出していくデイヴィッドとて、その置かれた境遇に違いはない。父親のジュリアスからは「テレビの修理屋」となじられ続け、かつての妻コニーからは野心がないと、絶縁状を叩き付けられた男である。生きて帰れる保証のないこの宇宙への危険な旅は、彼らを振り向かせるに充分な偉業を達成する絶好のチャンスのはずだ。攻撃艇の操縦を自ら申し出で、デイヴィッドとともに敵の母船へ向かうヒラー大尉も、また人類の運命を左右する戦いでミサイルを搭載した戦闘機ごと宇宙船に突っ込んでいく酔っ払いの農薬散布飛行士ラッセルにしても、夢に破れた、あるいは人生に打ちのめされた人物たちではなかったか。
それぞれの個人のドラマを縦糸に、SFスリラー、パニック、そして戦争といった50年代の侵略SF、ならびに60年代の戦争映画の要素を横糸に、巧みに織られた目にも鮮やかなペ
ルシャの絨緞のごときこの超娯楽大作の監督は、『ユニバーサル・ソールジャー』(Universal
Soldier,1992)、『スターゲイト』(Stargate,1994)で知られるドイツ生まれの Roland
Emmerich。脚本は『ユニバーサル・ソールジャー』以来のコンビ、Emmerich と Dean Devlin の共同執筆である。
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相模女子大学教授 曽根田 憲三 | |
■この映画の英語について
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『インデペンデンス・デイ』には、ハイテク用語や、通信・軍隊用語など出てくるが、理解の範囲を大きく超えることはない。また、さまざまな人々がさまざまな英語を話すものの、全体としては個人差にとどまる程度の標準的な英語で、比較的聞き取りやすい。しかも、超大作だけに、台詞にも工夫がこらされている。 この映画のテーマのひとつにコミュニケーションということが考えられるが、身近なものとして、電話の応対表現をいくつか拾ってみよう。まず、宇宙からの発信を最初にとらえた
SETI(地球外知的生命体探査研究所)で仮眠中の所長が電話で起こされる。"If this isnユt an insanely
beautiful woman, I'm hanging up."
迷惑だという意思表示を冗談まじりに伝える表現だ。ロサンゼルスに出かけている夫人からホワイトハウスの大統領に長距離電話がはいる。"Hello?"
"Hi. It's me." "Hi. What time is it there?"
ちなみにロサンゼルス-ワシントンDC間の時差は3時間ある。このあと、国防長官から緊急連絡が入ると、大統領は簡潔に "Yes."
と応える。大統領の緊急記者会見を見守る報道官のコニーに前夫デイヴィッドからの電話が取り次がれる。彼女のうんざりした気持ちを露骨に表わす応対は
"What do you want?" である。マーティが渋滞中の車から精神分析医に電話をかけると "Dr. Katz's
Office."
と歯切れの良い応対が聞こえてくる。ビジネスライクな表現だ。危機を伝えるためにホワイトハウスに向かうデイヴィッドは全米の電話番号が登録されているCD-ROMからコニーの携帯電話の番号を探しあてる。それとは知らずに何気なく
"What?" と電話に出てしまったコニーは、"David! How did you get this number?"
と慌てる。かける場合も、応える場合も「もしもし」で済んでしまう日本語に比べて英語表現は少しだけ豊かなようだ。 ほかに、印象的なセリフを2つ紹介したい。ひとつはエイリアンに誘拐されたことが
あるというラッセルが、ミサイルを積んだまま戦闘機ごと宇宙船に突っ込んでゆくときの "I'm back!"
は『ターミネーター』でのシュワルツェネッガーの "I'll be back."
を思い出させる。悲壮な場面にどこか'ー"アを残したセリフになっている。もうひとつは、エリア51内でデイヴィッドの父が'ダヤ教の祈りを捧げるため、人々と手をつないで輪をつくっているところに元CIA長官が座ったものの
"I'm not Jewish." と言ってためらうと、"Nobody's perfect."
となだめるところ。古い映画だが、マリリン・"ンローの『お熱いのがお好き』で、女装のジャック・レ"ンが、実は男だから結婚できないと告白したときに求婚者が口にするコミカルな名セリフなのだ。ほんとうに、映画は見れば見るほど楽しみが増してゆく。
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フェリス女学院大学助教授 福永 保代 | |
■目次
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1. |
Signals from Beyond |
宇宙からの信号 |
……………… |
8 |
2. |
Strange Phenomenon |
不思議な現象 |
……………… |
26 |
3. |
Panic |
パニック |
……………… |
44 |
4. |
Checkmate |
チェックメイト |
……………… |
68 |
5. |
Close Encounter |
未知との遭遇 |
……………… |
94 |
6. |
Area51 |
エリア51 |
……………… |
112 |
7. |
Alien Examination |
エイリアンの解剖 |
……………… |
128 |
8. |
The Counterattack |
反撃 |
……………… |
152 |
9. |
Uploading the Virus |
ウィルス放出 |
……………… |
174 |
10. |
Independence Day |
独立記念日 |
……………… |
190 | |
■コラム
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大きさの固定観念への挑戦 |
……………… |
66 |
ウィル・スミスの魅力 |
……………… |
92 |
戦う大統領とふられ男 |
……………… |
110 |
独立記念日について |
……………… |
172 |
アメリカ独立宣言 |
……………… |
208 | |
■見本ページ
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(画面をクリックすると詳細画像になります) |
■リスニング難易度
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評価項目
| 易しい(1) → 難しい(5) |
・会話スピード
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・発音の明瞭さ
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・アメリカ訛
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・外国訛
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・語彙
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・専門用語
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・ジョーク
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・スラング
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・文法
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合 計 |
19点 | ( 16以下 = Beginner, 17-24 = Intermediate, 25-34 =
Advanced, 35以上 = Professional )
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