■この映画のストーリー
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極秘スパイ組織 IMF のリーダー、ジム・フェルプスが当局から指令を受けたのは、プラハに向かう飛行機の中だった。任務は東欧に潜入しているCIA情報員のリスト、NOCを盗んだプラハの米国大使館員ゴリツィンと情報の買い手を捕らえることだ。だが盗まれたのは暗号名だけが記されたリストで、実名入りのリストが無ければ価値はない。ゴリツィンがそれを盗み出すために大使館のパーティに現れるという情報を手にしたジムは、イーサン・ハントを始めとする5人のメンバーをそれぞれの持ち場へ送る。しかしどうしたことか、この作戦は何者かに筒抜けだった。ハッカーのジャック、工作員のサラ、監視役のハンナ、それにゴリツィンまでが殺されてしまったのだ。さらにこともあろうかイーサンの父親的存在だったジムも凶弾に倒れてしまう。辛くも現場を逃れたイーサンはすぐさまCIAのキトリッジに連絡をとる。指定された場所に出かけると、今回の作戦が
IMF 内部に潜む裏切り者を暴くための罠だったことを教えられる。しかも、唯一生き残ったイーサンこそがその内通者に違いないと言うのである。一瞬にして何人もの仲間を失ったばかりか、あらぬ疑いまでかけられた彼は激しい怒りに全身を震わせながら、傍らの水槽を爆破してその場を飛び出し、アジトへと逃げ帰る。そのとき作戦で命を落としたと思われていたジムの妻、クレアが帰ってきた。彼らは事件の真相を探ろうと思案するが、その手がかりは余りにも少ない。分かっているのはただ内通者の暗号名がJOB、そしてJOBの取り引き相手がMAXというだけだ。そこで彼は一計を案じ、自らJOBになりすますとMAXに会い、CIAの陰謀を暴露して彼女の信頼を勝ち得ると、全世界のNOCリストとJOBの交換という取り引きを申し出る。イーサンとクレアは
IMF を解雇された人物の中からヘリコプターのスペシャリスト、クーガーと天才ハッカーのルーサーを選んで仲間に加える。彼らの目的はラングレーにあるCIA本部に侵入して、NOCリストを手に入れることだ。とはいえ厳重に警備された建物の一室のコンピュータから情報を盗み出すことは不可能に近い。入室のための声紋チェックや網膜スキャンといった数段階のセキュリティは言うに及ばず、僅かな音や侵入者の体温でさえも感知して警報装置が作動するという、まさに最先端の技術の粋が集められた場所なのだ。だが、不可能を可能に変えるプロフェッショナルの集団は頭脳と体力の限りを尽くして侵入し、まんまとNOCリストのダウンロードに成功する。このことを知ったキトリッジはあせった。CIAの機密情報が外部に漏れたら、世界中の至る所に累々たる死体の山が築かれるばかりか、彼としても決して無傷ではいられまい。彼はイーサンの母と叔父を麻薬密売容疑で逮捕した。イーサンをおびき出す、ただそれだけのために。ロンドンのアジトでテレビを見たイーサンは小雨に煙る街路へと飛び出すや、公衆電話の受話器をとってキトリッジに電話をかける。彼にわざと逆探知させ、ロンドンにいることを知らせると電話を切った。ところがそこへ死んだはずのジムが現れたのだ。顔は青白く、ほおはこけ、やつれ果ててはいるものの、確かにまだ生きている。心なしか震えるようなか細い声で、すべての陰謀の黒幕はキトリッジだと伝えるジムの言葉を耳にしたとき、血に濡れたおぞましい光景がイーサンの脳裏に鮮やかに蘇る。だが、それは彼が目にした光景でも、ジムが語るままの光景でもなかった…
実行不可能な作戦に敢然と挑戦する究極のスペシャリストの活躍を描いたこの話題の大作は、1967年9月から73年5月にかけてCBSテレビで連続放映された人気ドラマ『スパイ大作戦』をベースに、主演のトム・クルーズが92年にポーラ・ワグナーと設立したクルーズ・ワグナー・プロダクションで手がけた記念すべき最初の作品なのである。そのせいだろうか、クルーズの甘いマスクと演技には、これまでとは一味違った男の魅力が感じられよう。ギリシャの彫刻を思わせる鍛え上げられた肉体を駆使しての激しいアクションや、強靭な意志に漲る精悍な表情、ただそれだけではない。『ハスラー2』(The
Color of Money, 1986)、『ア・フュー・グッドメン』(A Few Goodmen, 1992)、『ザ・ファーム/法律事務所』(The
Firm, 1993) などで、ポール・ニューマン、ジャック・ニコルソン、それにジーン・ハックマンといったスーパースターとの共演を通して大きく変貌し、確実に成長を遂げたクルーズがここにはいるのだ。
彼の共演者たちも国際社会を舞台にしたエンターテイメントに相応しくそうそうたるメンバーである。IMF のリーダー、ジム・フェルプスには『帰郷』(Coming
Home, 1978) でベトナム負傷帰還兵を演じアカデミー主演男優賞を受賞したジョン・ボイト、彼の妻クレアにはフランス映画界を代表する女優の1人エマニュエル・ベアールだ。また、監督は『キャリー』(Carrie,
1976) で脚光を浴びてから『殺しのドレス』(Dressed to Kill, 1980)、『ボディ・ダブル』(Body
Double, 1984)、『アンタッチャブル』(The Untouchables, 1987)、『レイジング・ケイン』(Raising
Cain, 1992) といった作品で職人的手腕を発揮し、ビジュアル・マジックの達人として崇められるサスペンスの巨匠ブライアン・デ・パルマである。
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曽根田 憲三 (相模女子大学教授) |
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■この映画の英語について
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自動的に消滅 (self-destruct) するテープによって指令を受け、活躍する IMF
情報員の息も継がせぬアクションの数々。どうみても「見せる映画」である。このような映画を楽しみながら英語力をつける方法はあるだろうか? よくペーパーバックの読み方のコツとして、「場面を思い浮べながら読みなさい」というのがある。映画とタイアップしたノベライズ作品の場合、「読んでから見るか」「見てから読むか」を自分の実力や興味に応じて選択している方もおられるであろう。ここではシナリオを利用した勉強方法を考えてみよう。
1度見てから気に入った場面を選び、そこで誰が何をしていたかを思い浮べる。それを英語でどこまで表現できるか試してから、該当箇所をじっくり読んでみよう。シナリオのト書きの部分を利用できることに気づくはずである。たとえば最初の
mission では Jack pushes himself flush against the wall. / Ethan takes
off his glasses and positions them on the filing cabinet. / Ethan
pushes Sarah up against a wall and speaks into her ear. / A drunk
couple is sauntering down the street, singing in Russian. / Ethan
checks his wrist monitor and sees the barrel of a gun pointed toward
Jim. などの場面はすぐに思い浮かぶのではないだろうか?
多くの仲間を失った直後、隠れ家に着いてから Ethan がとった行動は何であっただろうか? ( ) up a spiral staircase,
( ) a light bulb, ( ) a bulb in his jacket, ( ) the glass fragments
on the hallway, ( ) another bulb の中に、順番に rush, undo, crush, scatter,
unscrew が入ったであろうか? 動作を示す表現を覚えるにはト書きがうってつけであることがよくわかる。ついでに bulb のような日常語を確実にものにしてゆこう。
Max からの指令を受けた Ethan の行動はまず ask a man ( ) a match で、しばらくは having
the mask ( ) his face していなければならなかった。Max の信用を得た後、NOC list を得るため Langley
に乗り込む4人。アクロバットさながらの身のこなしをみせる Ethan。うまくゆきそうな時に A rat makes its way
( ) Krieger. Krieger lets go ( ) the rope and Ethan drops. The bead
of sweat hanging ( ) the edge of Ethan's glasses drops. The knife
falls down ( ) the vault. となるのだが、for, over, toward,of, from, into
などと前置詞を入れることができただ ろうか?
和英の形でカードを作ってみるもよし、キーワードを見出しにして例文ごと抜き書きしておき、キーだけを見て全体を復元してみるもよし、自分なりの工夫をしながら、ひとつの映画をしゃぶりつくしてみよう。お気に入りのスターと一緒に遊びながら、数十の表現くらいはあっという間に身につけられるはずである。
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吉田 雅之 (神奈川県立外語短期大学助教授) |
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■目次
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1. |
The NOC List |
NOCリスト |
……………… |
8 |
2. |
Golitsyn |
ゴリツィン |
……………… |
28 |
3. |
Ambush |
待ち伏せ |
……………… |
44 |
4. |
Molehunt |
スパイ狩り |
……………… |
56 |
5. |
Job 314 |
ジョブ314 |
……………… |
74 |
6. |
The Disavowed |
被解雇者 |
……………… |
88 |
7. |
The Black Vault |
コンピューター室 |
……………… |
100 |
8. |
Back from the Dead |
黄泉の国から |
……………… |
118 |
9. |
The TGV Express Train |
超高速列車 |
……………… |
138 |
10. |
Red Light! Green Light! |
チューインガム爆弾 |
……………… |
154 |
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■コラム
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暗号名あれこれ |
……………… |
26
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冷戦の終結とスパイ映画 |
……………… |
42
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冷戦とインターネット |
……………… |
54
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トム・クルーズと『スパイ大作戦』 |
……………… |
98
|
オリジナルTVシリーズから劇場用映画へ |
……………… |
116
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暗号技術とハッカー |
……………… |
136
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■リスニング難易度
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評価項目
| 易しい → 難しい
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・会話スピード
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・発音の明瞭さ
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・アメリカ訛
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・外国訛
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・語彙
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・専門用語
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・ジョーク
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・スラング
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・文法
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合 計 |
17点 |
( 16以下 = Beginner, 17-24 = Intermediate, 25-34 =
Advanced, 35以上 = Professional )
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