パルプ・フィクション
PULP FICTION



監修 曽根田憲三
翻訳・解説 及川一美/及川学/曽根田純子/塩川千尋/曽根田純子/中村真理/BRUCE PERKINS/曽根田憲三
英文構成 及川一美/曽根田純子/BRUCE PERKINS/WARREN MCKENNA/曽根田憲三
編集 池下裕次/KIM A. LUTZ
A5版 138頁 ISBN-4-89407-119-3
本体価格=1,200円(税別)
1995年(平成7年)7月11日 初版発行


タランティーノ監督の出世作。いくつかの物語が絶妙に絡み合いながら、暴力と犯罪の世界をスリリングに描き出していく。スラングが多く、タランティーノ監督特有のマシンガントークも炸裂する。是非挑戦してみて下さい。

書 籍 紹 介
 
映 画 紹 介
書 名 スクリーンプレイ
「PULP FICTION
   パルプ・フィクション」
製 作 1994年
監 修 曽根田 憲三 会 社 QUENTIN TARANTINO
仕 様 A5版、138ページ 監 督 QUENTIN TARANTINO
発行日

1995年7月11

脚 本 QUENTIN TARANTINO
出版社 株式会社 スクリーンプレイ 出 演
JOHN TRAVOLTA
定 価 本体1,200円(税別) SAMUEL L. JACKSON
ISBN 4-89407-119-3 UMA THURMAN

 

■この映画のストーリー

 早朝のロスアンジェルス、敵対するギャング一味のアパートへ向かったヴィンセントとジュールズは、目的地に着くと4人のチンピラを虫けらのように撃ち殺す。ブツの入ったスーツケースを奪還し、仲間のマービンを後部座席に乗せてボスのもとへ車を走らせていたとき、銃撃の際に起こった不思議な体験に話題が及ぶや、つい興奮したヴィンセントは手に握っていた銃の引き金を引いてしまう。マービンの顔面から飛び散る鮮血と肉片で修羅場と化した車の中で返り血を浴びて愕然とする二人のギャング、すぐさま近くの友人の家へ押しかけ、ボスのマーセルスに電話して死体処理業者のウルフの到着を待つ。
 マーセルスに無事スーツケースを届けたその夜、彼の美しい妻ミアのお相手を頼まれたヴィンセントは1950年代風のレストランで食事をし、ダンスを踊る。彼女を家まで送り届けた頃には二人は互いに秘かに好意を抱いていた。だが、彼女の足をマッサージしたとかで命の危険に晒された仲間のことを思い出し、努めて紳士的に振る舞うのだった。ところがこともあろうに、彼が帰ろうとしたその時に、彼女は彼のジャケットに入っていたヘロインを吸引して鼻から血を滴らせながら意識不明の状態に陥ってしまう。ヴィンセントは慌てて彼女をヤクの売人のアパートへ連れて行き、停止寸前の彼女の心臓めがけてアドレナリン注射の針を打ち込んだ。
 マーセルスから八百長試合を依頼されていたボクサーのブッチは、彼を裏切り、自分に大金を賭けて、思いきり相手をマットに沈めて死に至らしめ、恋人の待つモーテルへと逃げ帰った。二人は賭け金をガッポリ頂き、南の島へ高飛びする計画を立てていたのだ。しかしいざ出発という時に、ブッチは重大な事実に気づく。祖父の代から受け継がれ、ベトナムの捕虜収容所で死んでいった父親が彼に手渡すために命を賭けて守り通した金時計をアパートに置き忘れていたことに…
 この映画は戦慄と興奮に満ち溢れた三つの物語から成り、しかもそれらの物語が相互に関わりあって全体として不思議な世界を醸し出す、既成の映画の概念をブチ破る独特の雰囲気を持った作品である。ある登場人物が最初から最後まで主役で他の人物が脇役というのではなく、一つのパートで主役を演じれば、次のパートでは脇役になるといった具合なのだ。また、時の流れを断ち切って、物語を解体し、現在と過去を縫い合わせることで斬新なムードと乾燥し、混乱したバイオレントな現代社会の様相を巧みに描き出している。そのため、もし我々が伝統的な物語の円滑な流れ、すなわち現実に起こり得るであろう幾多の出来事を包含した挿話のクロノロジカルな繋がりを望むとすれば、多少なりとも当惑を覚えるかも知れない。
 監督ならびに脚本は Reservoir Dogs (1991) で監督として衝撃のデビューを果たし、True Romance (1993)、Natural Born Killers (1994) の脚本で注目を集めた1963年生まれの若きホープ、クエンティン・タランティーノ。主演は Saturday Night Fever (1977)で世界のトップスターの仲間入りを果たし、Grease (1978)、Look Who's Talking (1989) で大ヒットを記録したジョン・トラボルタ、そしてミアを演じるのは Kiss Daddy Good Night (1987)で映画界入りして以来、Final Analysis (1992)、Mad Dog And Glory (1993) など、 次々と話題作に出演して現在最も熱い視線を集めているユマ・サーマンだ。また迫力満点のシーンを演じて見せるボクサーには Die Hard (1988)でお馴染みのブルース・ウイリスがあたっている。『パルプ・フィクション』はその作品の持つ圧倒的な面白さとパワー、そして徹底したリアリズムのために1994年のカンヌ映画祭でグランプリに、第67回アカデミー賞授賞式では栄誉ある脚本賞に輝いた。
曽根田 憲三 (相模女子大学教授)

■この映画の英語について

 ピストル強盗の相談から始まって、その実行(不発?)で終わるフィルムで、辻褄の合わない暴力沙汰や麻薬を吸ったり血だらけのシーンの連続である。
 全体にわたって内容にふさわしいイナセなセリフでおおわれているが、一例をあげると fuck / fuckin' という four-letter word(ののしり語)が嫌という程出てくる。これは日本人としては絶対使ってはいけない下品な言葉なので、注意して頂きたい。それを忘れなければ、私達としては応用出来る表現は結構多い。
 発音の点では主役のトラボルタとサーマンが良く、素人強盗でイギリス式のアクセントでしゃべるロンドン生まれのロスも悪くない。聖書を引用して哲学的なセリフをぶつジャクソンは歯切れのいい口調だが、黒人らしい訛りがあり語尾が切れる (cripped) 傾きがある。
 パンプキン(かぼちゃ)と名づけられたロスの喋り方はいかにもチンピラ風だが、口語英語の大きな特徴である短縮と省略が多い。冒頭のレストランでのシーンで Yeah, well, take heart, 'cause you're never gonna hafta hear it again. と言っているが、'cause は because の短縮形で会話ではよく聞かれる。gonna と hafta もそれぞれ going to と have to の短縮形でこれもくだけた会話ではよく使われる。このあとに続いて Correct./ Welcome. というセリフが出るが、これらは That's correct./ You're welcome. の省略である。
 1950年代風のレストランの場面がこの映画では珍しく暴力的でない。ヴィンセントとミアが到着すると店の男が Now, how may I help you? ([直訳]さて、どんなお役にたてましょうか)と聞く。May I help you? はどなたもご存じだが、How をつけるとより具体的で丁寧になる。これに答えるミアの There's a reservation under Wallace. はそのものズバリの言い方で、There'll be...(あるでしょう)/ There must be...(ある筈です)/ We have...(あります)などなら穏やかな表現である。「〜の名前で」の意味にはこの under が決まりである。
 このヴィンセントとミアのペアのやりとりでも省略がさかんに出る。ミアの Last I heard. は As (or According to what) I last heard. を、ヴィンセントの Just checking. は I was just checking. を簡単にしたものである。I'm just checking.(一寸確かめているだけ)は Is this yours?(これあなたのですか)などと聞いた時の言い訳に使う。
 ファビアンの Do you love me? に対するブッチの Very, very much. だが、この便利な強調を是非とも覚えたい。Do you love me? に限らず、Do you like Britain? / Are prices high in Japan?(日本の物価は高いの)などいろいろな問いの答えにも使い得る。Very much.(とっても)では物足りない場合に適切である。  荒事行動やののしり言葉に気を取られなければ、学べる表現がどっさりある映画である。
池田 拓朗 (青山学院大学教授)

■目次

1. 強盗 A Robbery ……………… 7
2. ハンバーガーと弾丸 Burgers & Bullets ……………… 13
3. ヴィンセントとミア Vincent & Mia ……………… 29
4. ダンス・コンテスト A Dance Contest ……………… 41
5. 危機一髪 Close Call ……………… 58
6. 金時計 The Gold Watch ……………… 69
7. 突然ビックリ A Sudden Surprise ……………… 83
8. 質屋 The Pawnshop ……………… 91
9. ウルフ The Wolf ……………… 100
10. 暴虐 Tyranny ……………… 123

■コラム

禁じられた4文字語 ……………… 28
麻薬とトリップ ……………… 40
麻薬とトリップ2 ……………… 57
『パルプ・フィクション』の面白さ ……………… 137

■リスニング難易度

評価項目 易しい → 難しい
・会話スピード
1 2 3 4 5
・発音の明瞭さ
1 2 3 4 5
・アメリカ訛
1 2 3 4 5
・外国訛
1 2 3 4 5
・語彙
1 2 3 4 5
・専門用語
1 2 3 4 5
・ジョーク
1 2 3 4 5
・スラング
1 2 3 4 5
・文法
1 2 3 4 5
合 計 22点

( 16以下 = Beginner, 17-24 = Intermediate, 25-34 = Advanced, 35以上 = Professional )