シャイン
SHINE


解説 瀧口優
編集 池下裕次/BETH POLLARD
A5判 160頁、ISBN4-89407-197-5
本体価格=1,200円(税別)
1998年(平成10年)7月21日 初版発行


実在のピアニスト、デイビッド・ヘルフゴッドの人生を描いた感動作。若くして音楽の才能を花開かせたデイビッドだったが、厳格な父への反発や、音楽への情熱のあまり、ラフマニノフのピアノ協奏曲3番にこだわり、やがて精神に異常を来していく。デイビッドの英語はやや理解しずらい部分もありますが、全体としては簡単な英語です。

書 籍 紹 介
 
映 画 紹 介
書 名 スクリーンプレイ
「SHINE
         シャイン」
製 作 1996年
解 説 瀧口 優 会 社 MOMENTUM FILM PTY.LTD
仕 様 A5版、160ページ 監 督 SCOTT HICKS
発行日 1998年7月21日 脚 本 JAN SARDI
出版社 株式会社 スクリーンプレイ 出 演
GEOFFREY RUSH
定 価 本体1,200円(税別) ARMIN MUELLER-STAHL
ISBN 4-89407-197-5 LYNN REDGRAVE

■この映画のストーリー

 現役の演奏家として、現在も演奏活動を続けているオーストラリア出身のピアニスト、デヴィッド・ヘルフゴット。「シャイン」は彼の半生を映画にしたものである。
 デヴィッドの父ピーターはポーランド生まれで、常に勝者となること、強い者だけが生き残ることを家訓として、自らの果たせなかった音楽への夢を子どもに託した。父の厳格で過剰な愛情の中で、デヴィッドは小さい頃からピアノにその才能を発揮し、父親の期待に応えるように努力した。その結果としてアメリカ留学の道が開かれるが、息子の才能が認められるようになると、自分から離れていくという不安からアメリカ留学を断ってしまう父親。そうした父親に反抗的な態度をとりながらも呪縛からのがれられないでいたデヴィッドであるが、全国器楽コンクールでの演奏が認められて、ロンドンの王立音楽学校からの奨学金授与の申し出を機に、父親から離れることを決意する。家族の結束を第一に考える父親は、「出ていったら二度とこの家に入れないぞ」という強権を発動するが、彼の心は変わらなかった。
 イギリスでは父親が「いつかこの曲を弾きこなして父さんを喜ばせてくれ」と言っていたラフマニノフの「ピアノ協奏曲第3番」に挑戦する。ラフマニノフの前でピアノ協奏曲3番を弾いたことのあるパークス教授に師事し、寒さに耐えながら日夜練習に励む。コンクールで演奏を成功させたが、精魂を使い果たして直後に倒れてしまう。以後精神に異常をきたし、オーストラリアにもどって精神病院の入退院をくり返す。父親は会おうともしないが、妹が病院を訪問する。
 やがて療養所でピアノを引いていた女性ベリルに引き取られて退院するが、病気特有の行動が続く。アパートを借りてもらってピアノをひく生活をしていたが、雨の日に道に迷ってワイン・バーの窓ガラスをたたくことから、ピアノの演奏家としての新しいスタートとなる。ワイン・バーでの演奏が新聞に載り、父親との再会も果たす。父親の中にも威厳に頼り切れない寂しさが読みとれる。
 ベリルの友達で占星術師のギリアンとの出会いが、彼の人生を更に「輝く」ものとする。ギリアンは既に他の男性との結婚を予定していたが、デヴィッドの「僕と結婚を」の申し出になやむ。「フィアンセはわたしがいなくても生きていける、でもデヴィッドは私がついていてあげないと・・・」という思いでデヴィッドとの結婚を決意する。ギリアンの深い愛情を受けて、デヴィッドは演奏家としての「輝き」を更に強くしていく・・・
 デヴィッドの青年時代を演じるのはノア・テイラーで、監督のスコット・ヒックスは、この時代のデヴィッド役をできるのは彼だけだと直観して撮影をすすめた。ノアは実際には27才なので、18才のデヴィッドを演じるのは難しかったが、持ち前の演技力で見事にその役に徹した。
 成人してのデヴィッド役はジェフリー・ラッシュである。彼はこの映画でアカデミー賞主演男優賞を受賞している。ジェフリーは1970年代からオーストラリアの舞台で活躍し、80年代からは映画にも出演している。最近の代表作としては「狂人日記」(1990)「オランダ人の情婦」(1993)「ハムレット」(1994)−以上舞台−「Twelfth Night」(1985)「Small Room Confessions on Our Selection」(1994)「Children of the Revolution」等−以上映画−がある。
 デヴィッドの父親役はアーミン・ミューラー・スタールである。アーミンは1930年ドイツの生まれで、1976年までは旧東ドイツで80本近い映画に出演していた。1980年に西ドイツに亡命後、俳優としての活動を再開し「ミュージック・ボックス」(1989)「わが心のボルチモア」(1990)「ナイト・オン・ザ・プラネット」(1992)「愛と精霊の家」(1994)等に出演している。
 ギリアン役はリン・レッドグレイヴで、1943年ロンドン生まれである。英国の俳優マイケル・レッドグレイヴの末娘で、62年の「真夏の夜の夢」で劇場デビューを飾る。姉に同じく俳優のヴァネッサがいる俳優一家である。また、デヴィッドのラフマニノフを指導するパークス教授役に、「ガンジー」等でもおなじみの92才のサー・ジョン・ギールグッドを配したのもヒックス監督ならではである。  人間の才能はどこで「輝く」のかわからない。大事なことはその才能を「輝かせる」人間が存在するかどうかである。「シャイン」が訴えているのもそのことではないだろうか。
熊谷高等学校  瀧口  優

■この映画の英語について

 オーストラリアの映画ということで、当然ながらアメリカ映画の英語と発音が違ってくる。しかし映画の中ではそれほどオーストラリア英語を意識しないで見ることができる。
 英語自体はきわめて単純でわかりやすいが、デヴィッドの何となくすれ違う中にもリズムのある英語は、映画全体の基調となってテンポの速い音楽を聞いているような感じである。同じ言葉のくり返しを聞きながら彼の口調に引き込まれていく。父親のピーターの英語が格調高くゆっくりと語られるのと合わせると、そこにも対照的な姿が浮かんでくる。デヴィッドを演じたジェフリーによれば、「デヴィッドは小川のせせらぎのようにペチャクチャと絶えず喋る。だけどその独白の再録をよく聞いてみると、リズムと言葉の繋げ方が詩のように洗練されている。まるでシェイクスピアを聞くようなのだ」(映画パンフより)ということになる。
 主人公デヴィッドの英語は、オーストラリアにいる間は口数が少ないながらも普通の口調となっていたが、1人でイギリスに渡ってパークス教授の指導を受けるようになってから、リズムに乗った口調となっていく。その切替はとても同じ俳優がやっているとは思えないような見事なものである。彼の英語は、その場のコミュニケーションとして「はずして」いるように見えるが、必ず次につながるように仕組まれているし、簡単明瞭な表現なので、他の出演者の発話もそれほど長くはない。すべてデヴィッドが理解できると思われる範囲でおさえられている。
 したがって英語の学習という点では、比較的扱いやすい映画とも言えるが、成人したデヴィッドの言葉は、いわゆるコミュニケーション的にまとまっていないし、口調は速いのでついていくのはかなり大変である。
熊谷高等学校  瀧口  優

■目次

1. I'm Gonna Win! 優勝するぞ ……………… 8
2. Young David 若き日のデヴィッド ……………… 26
3. State Champion チャンピオン ……………… 40
4. Katharine Prichard キャサリン・プリチャード ……………… 56
5. Royal College Of Music 王立音楽学校 ……………… 72
6. The Rach.3 ラフマニノフ第3番 ……………… 88
7. Beryl to the Rescue ベリルの救い ……………… 104
8. David's Comeback デヴィッドの復活 ……………… 116
9. Ask the Stars 星に聞いて ……………… 130
10. David in Concert コンサート ……………… 148

■コラム

ラフマニノフ ……………… 24
バックグランド・ミュージック ……………… 38
家族 ……………… 54
父親と息子 ……………… 102
なぜShineか ……………… 128
無償の愛 ……………… 156

■リスニング難易度

評価項目 易しい(1) → 難しい(5)
・会話スピード
1 2 3 4 5
・発音の明瞭さ
1 2 3 4 5
・アメリカ訛
1 2 3 4 5
・外国訛
1 2 3 4 5
・語彙
1 2 3 4 5
・専門用語
1 2 3 4 5
・ジョーク
1 2 3 4 5
・スラング
1 2 3 4 5
・文法
1 2 3 4 5
合 計 25点

( 16以下 = Beginner, 17-24 = Intermediate, 25-34 = Advanced, 35以上 = Professional )