スピード
SPEED



監修 曽根田憲三
翻訳・解説 曽根田憲三/福永保代/伊藤盡/曽根田純子/草刈大介/及川学
英文構成 株式会社スクリーンプレイ編集部
編集 池下裕次/NANCY KUMAMOTO
A5版 216頁 ISBN-4-89407-168-1
本体価格=1,200円(税別)
1997年(平成9年)9月2日 初版発行


時速80キロ以下に減速すると、自動的に爆発する爆弾を仕掛けられたバスに乗り込んだSWAT隊員の活躍を描く。キアヌ・リーブスとサンドラ・ブルックの豪華共演が話題を呼んで大ヒットした。英語は中級程度。

書 籍 紹 介
 
映 画 紹 介
書 名 スクリーンプレイ
「SPEED
       スピード」
製 作 1994年
監 修 曽根田 憲三 会 社 20TH CENTURY FOX
仕 様 A5版、176ページ 監 督 JAN DE BONT
発行日 1997年9月2日 脚 本 GRAHAM YOST
出版社 株式会社 スクリーンプレイ 出 演
KEANU REEVES
定 価 本体1,200円(税別) DENNIS HOPPER
ISBN 4-89407-168-1 SANDRA BULLOCK

 

■この映画のストーリー

 『スピード』は工夫に富んだ仕掛けがいっぱい詰まった緊張と興奮を約束してくれる独創的なスリラーである。ロサンゼルスの高層ビルのエレベーターで突然爆発が起こり、宙づりになったエレベーターに閉じ込められた乗客の悲鳴で始まり、市内を走る路線バスと地下鉄を使っての執拗な追跡劇がそのすぐ後に続く。そのためアクション、スタント、特殊効果の連続で、我々を画面に釘付けにしてしまう。もちろん、こうした類の映画はこれまで幾度となく作られてきた。しかし、これほどまでに巧みで、観客に息つく暇も与えないほどのハイパーテンスなシークエンスの連続は極めて稀と言えるだろう。
 この映画の主人公はロサンゼルス市警 SWAT の一員、Keanu Reeves 演じるジャックである。彼と Jeff Daniels 扮する彼のベテラン・パートナー、ハリーは狂気の爆弾魔がエレベーターを支えているケーブルを爆破した直後に呼び出される。いつ地上に落下するかも知れないこのエレベーターの死の恐怖に怯えた10数名の乗客をたてに、爆弾魔は300万ドルを要求する。猶予は1時間、もし彼の要求に応えなければ起爆装置のボタンを押して、エレベーターの緊急用ブレーキを爆破するという。こうした絶体絶命の状況それ自体、スリラーの真髄とも呼ぶべきものだが、『スピード』にあってはそれは単なる序曲に過ぎない。物語が進むにつれて、この迫力のシーンはジャックと爆弾魔との間における頭脳と勇気、忍耐としたたかな駆け引きの壮絶な戦いへと発展していくからだ。
 この見るからに悪党らしい爆弾魔を演じるのは Dennis Hopper で、彼の過去の生きざまから、現在のところ最も安心できる、そして最も不気味な、まさにこの役にうってつけの男優である。ジャックや警察の動きを1つ残らず読み取ることのできそうな頭の切れる、爆弾について熟知した、身の毛もよだつ戦略に長けた男である。それもそのはず、この男は元警官で、爆弾処理班の一員なのだ。勤務中に指を1本失ったことが原因で、警察に強い恨みを抱いて引退。彼が「老後の資金」と称して要求する身の代金は、彼にとっては警察からの彼に対する慰謝料であり、彼らに対する仕返しでもあるわけだ。だからこそ、エレベーターの一件でジャックにまんまと裏をかかれ、惨めに退散せざるを得なかったとき、彼が敢行した次なる作戦は真に悪魔的と呼ぶに相応しいものとなるのだ。
 爆弾魔はジャックに対する挑戦として彼の目の前で1台のバスを爆破してみせ、別の市内を走るバスに爆弾を仕掛けたと電話を入れる。もしそのバスの速度が時速50マイル以下に落ちると起爆装置が作動して爆弾が爆発する仕組みだという。しかも今度の身の代金は370万ドル、乗客の1人でも降ろそうとすればバスを爆破すると警告する。ジャックはすぐさま車に飛び乗り、15名の無邪気な乗客を乗せてフリーウェイを走るバスを追い、信じがたいハードなスタントの末、やっとのことでそのバスに乗り込む。彼が警官と知り、自分が逮捕されると勘違いした乗客の1人が発砲。運悪く弾は運転手に当たってしまうが、度重なるスピード違反で免許取り消しの処分にあった乗客のアニーが代わってハンドルを握り、この窮地から抜け出す方法を思案するジャックと組んで、時速50マイルで走り続ける。対向車線に侵入したり、他の車をはね除けたり、幾つもの接触事故を引き起こしながら、やがて安全走行ができそうな交通量の全くない工事中のフリーウェイにたどり着く。だが物語のサスペンスを維持するために、もちろんこの道路は未完成、数キロ先にはおそるべき50フィートの切れ目がしっかりと用意されているのだ。
 映画脚本はこれが初めてという Graham Yost は、観客に考えるすきも与えないほど次々と面倒な事態を積み重ねていく。バスによる想像を絶する大空中ジャンプの場面を描いて見せたかと思うと、今度は爆弾を処理するために疾走するバスの下にジャックを潜り込ませる。しかもその間、カメラをしばしば爆弾魔の姿に切り換え、勝ち誇った笑いを浮かべて乗客たちの怯えた様子を伺いながら、陰険なヒントを口にしてみたり、最後通告を発したりする彼の様子を映し出し、不気味さとテンションを高めていく手法は徹底している。やがて乗客がバスを降り、無人のバスが飛行機にぶつかって炎上するとき、我々の誰もが映画の結末は近いと感じるだろう。だが、この予測もまた見事に裏切られてしまうのだ。今度はアニーが人質として捕らわれ、体中に爆弾を巻かれた挙げ句、手錠姿で地下鉄の客車に閉じ込められる・・・
 この映画の主役 Keanu Reeves はどちらかというと前作『リトル・ブッダ』で披露した神秘的な王子シッタールダに見られる通り、繊細で、スイートないささか幻想的な人物向きだ。本人もそのことは重々承知しており、最初にこの映画の脚本を読んだときはミスキャストだといって抵抗を示したという。だがマッチョではなく、傷つきやすい一般大衆に親近感を抱かせるようなアクション・ヒーローの出現を願っていた監督の説得によって挑戦し、結果的にはシュワルツェネッガーやブルース・ウィリスなみの見事なアクションを披露して、彼らに継ぐ第三の、いや久しく待ち焦がれていた若きアクション・スターの出現などと囁かれ始めるに至ったのである。監督は『氷の微笑』や『ダイ・ハード』など多くのアクション映画で名カメラマンとして活躍してきたものの、メガホンを握るのはこれまた初めてという、オランダ生まれの Jan De Bont。1994年度を代表するアクション映画の決定版と誉れの高い超娯楽大作である。
曽根田 憲三 (相模女子大学教授)

■この映画の英語について

 イギリス英語とアメリカ英語の違いの1つとして、アメリカ英語は bear、bird などの母音に -r をつける傾向があることが挙げられる。特に、この映画の舞台、カリフォルニアでは、この特徴が顕著だ。都市はロサンゼルス。エレベーターが何かの爆発のために突然落下し、そこへ警察官が駆けつける。指揮官から事件の処理の指示を受けての "Yes, sir." という答には、確かに -r がついている。前後の音を続けて発音する、連音、が使われることも多く、東部の英語に比べると、滑らかに響く。1分間に140から160語が平均的なアメリカ人の話のスピードだが、この映画ではもっとテンポが速い。次から次へと切迫した場面が続き、いつもはらはらしながら見ている者にとって、登場人物たちのアップテンポな話しぶりは、いやが上にもサスペンス感を盛り上げてくれる。
 この映画は、『ゴッドファーザー』、『ダーティーハリー』、『エクソシスト』などと共通点がある。それは、 "Fuck you!" などの「ののしり英語」が頻繁に使われていることだ 。アメリカ人は自分の思い通りに事が運ばない時、忌み嫌っている事柄や人物をののしりたい時、自分の運命を嘆く時などに、不平、不満を浄化するために「ののしり英語」を使う。ここでも、fuck、fuck you、shit、bullshit、asshole など、次から次へと登場してくる。普段は口にしない下品な言葉を相手に浴びせかけ、「お前はそれだけ愚劣で最低だ」と見下すことで自己を昇華しているのかもしれない。 "Shit!" は女性も使う。Annie は、バスを運転しなければならないことにはじめ動揺するが、Jack と共にバスの乗客の命を預かっていることを認識し始めた頃から盛んに "Shit!" を連発し見事にそれをやってのける。自分を鼓舞していくうちに、警察官の Jack との仲間意識が出て来たのだろう。伝統的に男性が中心に活躍してきた職場の仲間同士では、いわゆる「四文字言葉」の使用は日常茶飯事だ。また、バスが50マイルで走り続けている中、爆薬の仕掛を外そうとバスの下に潜り込む Jack からの伝言を、怪我をして警察署に待機している Harry に伝える役目を果たした乗客は、 "fuck" と言えるほど打ち解けず、少々ニュアンスをやわらげて "Oh, darn.”と言っているのは興味深い。
 緊張の中にもユーモアを交えた言葉の綾は、見ている者にふっと安心感を与えるものだ。負傷したバスの運転手 Sam を、犯人との交渉でやっとバスから降ろすことになった。Jack が "How are you feeling?" と聞くと、Sam は、 "Like I've been shot." と冗談を言う。いつ爆発するかわからないバスに残らなければならない人たちへの暖かい思いやりを覗かせる言葉でもある。
 全編を通しての、歯切れ良く間髪を入れないテンポの速い会話を充分楽しんで頂ければ幸いである。
 金子 朝子 (昭和女子大学教授)

■目次

1. Howard Payne ハワード・ペイン ……………… 8
2. The Daring Rescue 救助敢行 ……………… 22
3. Bomb on Bus! バスに爆弾! ……………… 42
4. Stay Above 50 50マイル以上に保て ……………… 58
5. Dilemmas ディレンマ ……………… 76
6. The 105 Freeway フリーウェイ105号線 ……………… 88
7. 50-Foot Gap 50フィートの切れ目 ……………… 104
8. Tricking Howard ハワードを欺く ……………… 122
9. Pershing Square パーシング・スクエア ……………… 142
10. An Unfinished Subway 未完成の地下鉄 ……………… 158

■コラム

アメリカの交通ルール ………………
74
キアヌ・リーヴス ………………
102
サンドラ・ブロック ………………
140

■リスニング難易度

評価項目 易しい → 難しい
・会話スピード
1 2 3 4 5
・発音の明瞭さ
1 2 3 4 5
・アメリカ訛
1 2 3 4 5
・外国訛
1 2 3 4 5
・語彙
1 2 3 4 5
・専門用語
1 2 3 4 5
・ジョーク
1 2 3 4 5
・スラング
1 2 3 4 5
・文法
1 2 3 4 5
合 計 18点

( 16以下 = Beginner, 17-24 = Intermediate, 25-34 = Advanced, 35以上 = Professional )