■この映画のストーリー
|
アメリカの有名な作家 E.W.ホワイト(Elwyn Brooks White, 1899-1985)が1945年に出版した子供たちのための小説『スチュアート・リトル』(Stuart
Little)をベースにした同名の映画が製作され、大ヒットを飛ばしたのは1999年の晩秋のことである。それから3年近くの歳月を経てあの
CG のネズミ、スチュアートを主人公にしたファンタジーが再びスクリーンに戻ってきた。前作でリトル家の養子に迎えられた彼も今ではすっかり家族の一員となり、精神的にも大きく成長した頼もしい人物、いやネズミとなっている。しかも、ここ数年の間に一段と進化したコンピュータと
CG の技術によって、彼の動きはさらにスムーズなものとなり、またダイナミックになっているのだ。
さて物語だが、主人公のスチュアートは優しいパパとママ、それに兄のジョージと、生まれたばかりの妹マーサとともに何不自由のない毎日を送っている。ジョージと一緒に同じ小学校に通って勉強したり、サッカー部にも入っている。だが、ただ1つ残念なことは、何をやっても人間の子供たちと全く同じとはいかないために、ちょっぴり寂しい思いをしていることも確か。体のサイズが小さいために、ママは過保護になるし、ジョージは彼の友人と遊んでばかり。そんなとき、スチュアートの前に現れたのがマーガロという名の小鳥だった。学校帰りの彼の真っ赤なコルベットの助手席に彼女が突然、空から落ちてきたのだ。驚いて必死に声をかける彼に、意識を取り戻したマーガロは、大空を我がもの顔で飛び回るどう猛なファルコンに追われているという。スチュアートは傷を負った彼女を心配し、リトル家へと連れ帰る。生まれて初めて自分の目線で話せる友達ができたことが、彼には何より嬉しかった。
そんなマーガロの世話をするうちに、スチュアートはキュートな彼女に単なる友達以上の感情を抱くようになる。パパに言わせると、男の子が異性に対してしばしば抱く淡い恋心だという。だが、スチュアートが学校へ行っている間にファルコンがマーガロのところへやって来て、リトル夫人の指輪を盗むようにと告げる。実はマーガロはファルコンの相棒で、金目のものを盗むために怪我を装ってスチュアートに近づいた詐欺師だったのだ。そうとは知らないスチュアートは彼女のことを信用し、いつもこまめに身の回りの世話を焼いていた。ある夜、指輪を外して台所で炊事をしていたママの指輪が無くなった。もちろんマーガロが盗んだのだが、指輪が流しの配水管の中に落ちたものと思い込んでしまったスチュアートは、ママの大切な指輪を探しに排水口の中へと入っていく。ところが、パパがつかんでいた命綱が突然切れてしまったから大変だ。スチュアートが真っ暗な排水口に取り残されて、誰もがオドオドするなか、マーガロはリトル夫人の首からネックレスを取り、それを配水管につるして彼を救い出す。スチュアートをはじめ、リトル家の人たちはマーガロに感謝するが、彼らのことを裏切っている彼女の表情は暗かった。
その日の夜、激しい罪悪感に苛まれたマーガロは自分を信じ、まるで家族の一員のように接してくれたリトル家の誰にも別れの言葉を告げることなく、暗黒の夜空へと旅立っていく。翌朝、目を覚ましてマーガロがいないことに気づいたスチュアートは、彼女がファルコンに誘拐されたに違いないと考えて、パパとママには黙っているようジョージに頼み、気乗りのしない猫のスノーベルを説得して、マーガロの救助へと向かうのだった。
ファルコンの居場所が突き止められず、ニューヨークの街中で途方に暮れていたときに、運よくスノーベルの旧友モンティに出くわす。中華レストランから放り出されたノラ猫モンティによると、ファルコンは高層ビルの頂上を根城にしているという。風船を使ってどうにか悪党ファルコンの住み家に辿り着いたスチュアートだったが、ファルコンと一緒にいたマーガロの口から思ってもみなかった真実を聞かされた。彼女の言葉に多少驚きはしたものの、「一度友達になったら、一生友達だ」という自分の信念を曲げることなく、「それでも君は友達だ」と優しい言葉をかけるなり、彼女を助けるために勇敢にファルコンに立ち向かっていく。とはいえ、スチュアートは体の小さいただのネズミ、とうていファルコンの敵ではなかった。いとも簡単にファルコンの邪悪な爪に掴まれるや、空中から地面に向かって放り投げられたのである。たまたま下を通りかかったゴミ運搬車の上に落ちたため、路面に叩きつけられてバラバラにならずにすみはしたものの、意識を失い、気づいたときには海を渡るゴミ運搬船の中だった。山と積まれた廃棄物の中にいる自分の不幸を呪い、嘆き悲しんでいたそのときに、数日前にジョージと一緒に組み立てたプラモデルの飛行機がゴミの山に埋もれているのが目に入った。壊れたおもちゃと悪戦苦闘の末、やっと修理を終えたスチュアートは反撃を開始する。ついにファルコンとの激しい空中戦の火ぶたが切って落とされたのだ・・・
『スチュアート・リトル』でも書いたことだが、この映画は表面的には子供たちを楽しませるファンタジックな冒険物語という体裁を取りながら、実は、その根底では「多様性の受容」というアメリカならではの極めて重要なテーマを扱っている。言うまでもなく、主人公の住むアメリカは世界各国から多種多様な人々が集まって出来た多民族国家だ。人により文化的背景も、また身体的な特徴も異なっている。そうしたアメリカ社会の構成要員の人種的、民族的な違いは、ユダヤ系アメリカ人のリトル家や、アフリカ系アメリカ人であるジョージの親友ウィル、あるいは体の小さなネズミのスチュアート、さらには鳥のマーガロといった具合に、巧みに描き出されている。つまりスチュアートがペットではなく、家族の一員ということが暗示しているように、「人種のるつぼ」としてのアメリカ社会が象徴的に描かれているのだ。だからこそ、次の世代を担う子供たちはリトル家の人々のように、人種や文化的な違いを越えて、互いに理解し、受容することを学んでいかなければならないのである。
子供から大人まで誰もが楽しめる、そしてチョッピリためになるこの映画でメガフォンを握ったのは前作同様ロブ・ミンコフ(Rob Minkoff)である。また15歳で芸能界に身を投じ、必死に走り続けてきた
Back to the Future シリーズでお馴染みのマイケル・J・フォックス (Michael J. Fox, 1961-
)が今回もまたスチュアートの声に挑戦し、彼に生命の息吹を吹き込むことに成功した。そして、新たにスチュアートのガールフレンドとして登場したマーガロの声を演じたのは、ヒッチコック(Alfred
Hitchcock, 1899-1980)監督の『鳥』(The Birds, 1963)で主演したティッピー・ヘドレン(Tippi
Hedren, 1931- )の娘で、『ワーキング・ガール』(Working Girl, 1988)においてアカデミー主演女優賞にノミネートされたメラニー・グリフィス(Melanie
Griffith, 1957- )だ。 2002年7月にソニー映画が世界の子供たちのために世に送り出したさわやかな感動を与えてくれる、小さな恋と冒険のファンタジックな映画である。
|
曽根田 憲三 (相模女子大学教授) |
|
■この映画の英語について
|
本映画は CG キャラクターが主人公とは言え、ファミリーが舞台であるから、生活に密着した英語が堪能できる。こうした英語を、以下の3点に留意して押さえておくと、作品全体をうまく攻略できるはずだ。
■ まずは、本作品のテーマに関連する次の英語格言から。
Every cloud has a silver lining. これは文字通りには「どんな雲でも裏側は銀色」ということで、それが意味するのは「逆境においてもチャンスは必ず訪れるからくじけるな」ということである。ストーリーの節目で何度か出てくるので、頭に入れておこう。
■ 次に、以下のような成句表現を押さえておこう。これは、口語でよく使われる決まり文句で、そっくりそのままリサイクルできるものばかりだ。そのほとんどは字面が易しい単語からなるので注意しよう。特に、antagonize
(〜を敵に回す)といったビッグワード(長くて難しい単語)ばかりに目が向いてしまう人は、要注意だ。
I won't let you down. 「がっかりさせないから、任せといて」
I owe you one. 「君には借りができたね」
You can make it. 「やれるぞ!」
That's a laugh. 「(自分を見くびった発言に対して)笑わせてくれるじゃないか」 Are you out of your
mind? 「バカなこと言うなよ」
You eat like a bird. 「食が細いね」(→作品中では、本当の鳥である Margalo に対して言うので、ジョークになっている)
You gotta help me. 「助けてくれるよね」
Did she buy it? 「彼女はその話を信じたかい」
What are you waiting for? 「何をグズグズしてるんだ」
The party's over. 「お遊びは終わりだ」
■ 3点目として、これも日本人が苦手な生活語彙にも注目しよう。
call the plumber 「配管工に電話する」(→plumber の発音は「プラマ」) (Mom's ring) went
down the drain. 「(ママの指輪が)配水管に落ちた」
turn on the garbage disposal 「生ゴミ粉砕器をオンにする」
(I'm) in the can. 「トイレに入っている」(→作品中では Margalo が文字通り「私は缶の中にいる」と言っているのを、猫の
Snowbell がこの意味と勘違いする)
fix lunch 「ランチを作る」
have crushes 「何度か強烈な片思いをする」
tuna/ herring/ lox 「ツナ(=マグロ)/ニシン/スモークサーモン」 こうした成句や生活語彙をあらかじめ頭に入れた上で、この映画を鑑賞してみよう。ストーリーを楽しみながら、本作品の英語が楽しく攻略できるはずだ。
|
磐崎 弘貞 (筑波大学助教授) |
|
■目次
|
1. |
The Soccer Game |
サッカーの試合 |
……………… |
8 |
2. |
Alone Again |
また独りぼっち |
……………… |
28 |
3. |
Silver Lining |
銀の裏地 |
……………… |
42 |
4. |
Top of the World |
最高の気分 |
……………… |
56 |
5. |
Down the Drain |
排水溝の中へ |
……………… |
66 |
6. |
I'm Gonna Find Her |
彼女を捜しに |
……………… |
82 |
7. |
Monty |
モンティ |
……………… |
98 |
8. |
Falcon's Lair |
ファルコンのねぐら |
……………… |
108 |
9. |
Another Adventure |
冒険を再び |
……………… |
122 |
10. |
Bye-bye,Birdie |
バイバイ、小鳥ちゃん |
……………… |
140 |
|
■コラム
|
|
■リスニング難易度
|
評価項目
| 易しい → 難しい
|
・会話スピード
|
|
・発音の明瞭さ
|
|
・アメリカ訛
|
|
・外国訛
|
|
・語彙
|
|
・専門用語
|
|
・ジョーク
|
|
・スラング
|
|
・文法
|
|
合 計 |
16点 |
( 16以下 = Beginner, 17-24 = Intermediate, 25-34 =
Advanced, 35以上 = Professional )
|