■この映画のストーリー
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どこの都市にもありそうな車道トンネルを、いろいろな悩みやバックグラウンドを背負った人々が、狭き入り口から向1930年代、ユニバーサルは『魔人ドラキュラ』(1931)、『フランケンシュタイン』(1931)などの映画をヒットさせ、「ホラーのユニバーサル」と呼ばれる時代を築いた。その名声を確実にしたのは1932年に製作された古典的名作『ミイラ再生』(監督:カール・フロイント、主演:ボリス・カーロフ)である。女性考古学者が発見したミイラを、ある若者が呪文で蘇らせてしまい、3000年の眠りから覚めたミイラはかつての恋人にそっくりな女性に迫る、という話なのだが、これを現代の最先端技術を駆使して復活させたのが本作『ハムナプトラ
失われた砂漠の都』である。
「ハムナプトラ」は「生者の都」であるテーベから離れた砂漠の奥地にある「死者の都」のことで、歴代のファラオとその財宝が眠る埋葬地である。物語は紀元前1290年、国王セティ1世が支配する古代エジプトから始まる。セティの大司祭であるイムホテップと、セティの愛人アナクスナムンは密かに情を通
じていたが、セティに関係を暴かれてしまい、ついにはセティを殺害してしまう。その罪の重さからアナクスナムンは自害し、イムホテップはホムダイの刑に処される。ホムダイは生きたままミイラにされ、死を迎えることもできずに永遠に苦しみ続けるという極刑だが、再び彼が目覚めることがあれば、エジプトに10の災いをもたらし、無敵の力を持つという恐ろしい副作用があった。メDeath
is only the beginning.モ という言葉通り、このことを知っていたイムホテップは、ハムナプトラの砂の下で、蘇って復讐を果
たす時を待ち続けるのであった。
それから3000年後の1925年、外国人部隊の脱走兵のリチャード・オコンネルは、博物館司書のエヴリンに命を助けてもらい、それと引き替えに、彼女とその兄ジョナサン、そして刑務所長の3人をハムナプトラへ案内することになった。オコンネルの元同僚ベニもアメリカ人の探検グループを率いてハムナプトラを目指していた。どちらが先にたどりつくかで争う両者だが、彼らの行動はアーデス・ベイをリーダーとするメジャイと呼ばれるハムナプトラの番人によって監視されていた。
一行はハムナプトラにたどり着き、それぞれの目的を果たすべく廃墟の奥深くへと進んで行くが、随所に仕掛けられた罠や、メジャイの攻撃を受け一筋縄では行かない。おまけにエヴリンが好奇心で読み上げた「死者の書」により、3000年の眠りからイムホテップが目覚めてしまう。言い伝え通
り「10の災い」が次々と起こり、櫃を開けてしまったアメリカ人グループの面 々は殺され、エヴリンは生け贄として追いかけられることとなる。エヴリンそして世界の危機を救うべく、オコンネルは敢然とイムホテップに立ち向かう。再生して無敵となったイムホテップに立ち向かう術はあるのだろうか。
テーベ、カイロ、ナイル川、サハラ砂漠、とエジプトの名所を舞台にストーリーは進んでいく。時代設定は1920年代で、第一次世界大戦(1914-18)が終わり、ヨーロッパ諸国の勢力図が激変していたころである。1922年には、実際に映画のように、イギリスの考古学者ハワード・カーターがエジプトの王家の谷でツタンカーメンの墓を発見し、埋葬品や王のミイラを発見して世間を騒がせていた。墓の壁に記されていた「墓をあばいて眠りを妨げる者は不吉な死に襲われる」といった呪い通
り、発掘に関係した何十人もの人々が変死をしたことから「ファラオの呪い」も噂されるようになった。そこから『ファラオの呪い』(1929)、そしてこの映画の原点となった『ミイラ再生』などの映画が多く製作されたのである。
監督は『ジャングル・ブック』(1994)や『ザ・グリード』(1998)のスティーブン・ソマーズ。彼は本作のように常に脚本も手掛けることで知られており、新鋭監督として批評家の絶賛を受けている。彼のもとに『フィールド・オブ・ドリームス』(1989)で製作を担当したジム・ジャックスとショーン・ダニエルを初めとした豪華なスタッフ陣が集結し、壮大な夢とロマンのアドベンチャー映画が誕生した。
ヒーローのリック・オコンネルを演じるブレンダン・フレイザーは、『青春の輝き』(1992)、『ジャングル・ジョージ』(1997)などに出演しているアメリカの若手俳優である。またヒロインのエヴリンは『魅せられて』(1996)や『輝きの海』(1998)のイギリスの新進女優レイチェル・ワイズが演じている。エヴリンの兄ジョナサンを演じるのは『フォー・ウェディング』(1994)『スライディング・ドア』(1998)で高い評価を得ているジョン・ハナ。知名度は大スターと言われるには及ばないが、若手の実力派として注目されている面
々がそろっている。このような種の超大作映画ともなると、俳優への高額な出演料だけでもばかにならないが、『ハムナプトラ 失われた砂漠の都』では、主役は大スターではなく、将来性のある実力派の2人を起用することで、映像製作費にかなりの投資をすることが可能となったのである。砂漠での戦闘シーン、復元していくミイラ、砂が立ち上がるシーンなど、この映画では
CG が駆使され、驚異的な映像を我々に見せつけてくれる。イムホテップを演じた南アフリカ出身の俳優アーノルド・ボスルーは、完全な姿こそほとんど画面
に出てこないが、体中にコードをつけてミイラ CG のための演技をしなければならなかった。彼の動きはコンピューターによりミイラ CG
にダイレクトに反映されるため、よりリアリティーのある動きを作り出すことができたのである。またオコンネル演じるブレンダン・フレイザーも、アクションシーンはほとんど
CG との絡みだったため、CG の動きを想定して誰もいないところでの演技をこなした。その行程は DVD に収められているメーキングドキュメンタリーなどで紹介されているが、その映像マジックには目を見張るばかりだ。1999年の夏を騒がせた大ヒット作、新たなる映像時代の幕開けとなるだろう。
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二村 優子(スクリーンプレイ) |
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■この映画の英語について
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時代設定、舞台設定からすると、非常に難しい英語が使われていそうなものだが、そこはハリウッド、全体的に平易な英語で、万人受けするように味付けされている。
この映画の一番の目玉は、英語がバラエティに富んでいることであろう。国際語として英語を学ぶ我々にとっては、いいお手本になるに違いない。イギリスの植民地支配下にあったエジプトが舞台で、そこにアメリカ人が絡んでくるので、映画の主流を占めるのはイギリス英語とアメリカ英語。登場人物で言えば、エヴリン、ジョナサン、ウィンストンなどがイギリス英語で、それと好対照をなしてオコンネルや、宝探しにやってきたアメリカン人連中がバリバリのアメリカ英語を話す。
とくに、このイギリス英語とアメリカ英語の対比が面白いのでここに注目(聴?)してもらいたい。たとえば、この映画では、卑語やスラングはほとんど使われていないのだが、面
白いのはそういった卑語を使うのは決まってアメリカ人連中で、「アメリカ人は粗野で野蛮」といったありがちな偏見を裏付けしているかのようである。ただし、あまり汚い言葉が含まれると、子供が見られなくなるという影響を考えてか、damn(ed)
など、その言葉自体には特別な意味を持たずに、強意として使われるタイプの比較的軽いものしか使われておらず、これぐらいの表現は頻出なので、ぜひ聞き取れるようになっておきたい。
また、オコンネルのセリフ Didnユt mean to scare you.(驚かすつもりじゃなかったんだ)では、文頭の I
が省略されているように、口語ではこういった省略もよく見られるのであるが、こんな省略表現を使うのも主にアメリカ人で、アメリカ英語の方が、くだけた雰囲気が醸し出されている。監督や脚本家にそこまでの意図があったのかどうかは定かでないが、楽しそうに銃を乱射するアメリカ人を見て、ジョナサンが、ぼそっと
Americans.(アメリカ人はこれだからなぁ)とつぶやくシーンからして、ある程度「アメリカ人の粗野さ」をわざとジョークのネタとして、用いたのであろう。
同様に、イギリス英語も笑いの要素として使われている。ステレオタイプ的なイギリス人、皮肉家のジョナサンのセリフ A little
help would be useful if it's not too much trouble!(面倒でなければ、手を貸していただきたいのですが)は、非常にフォーマルで、丁寧な依頼をするときにはうってつけの表現。ところが、この場面
は飛行機が落ちた直後で緊迫しており、状況にはとても似つかわしくない。そんなときに、こんな表現をわざと使うことで、「早く助けてくれ」を強調しているのである。言語は文化を反映するものであるが、このように英語の違いからも文化の違いをかいま見ることできて興味深い。
またハンガリー訛や、エジプト訛といった、普段、聞き慣れないようなアクセントも含まれているが、きついものではないので、聞き取りに支障が出るほどではないだろう。むしろ、英語初級者にとっては、同じ外国人として使う、彼らの英語の方が聞き取りやすいということもあるかも知れない。多様化する現代では、こういった様々なアクセントの英語に慣れることで、国際語としての英語力をつけていくとが大切である。
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池下 裕次(スクリーンプレイ) |
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■目次
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1. |
The Ancient Curse |
古代の呪い |
……………… |
8 |
2. |
The Puzzle Box |
パズル・ボックス |
……………… |
18 |
3. |
The River Nile |
ナイル川 |
……………… |
34 |
4. |
The Camel Race |
ラクダ競争 |
……………… |
48 |
5. |
The Warning |
警告 |
……………… |
58 |
6. |
The Plagues |
天災の始まり |
……………… |
72 |
7. |
Serious Trouble |
一大事 |
……………… |
90 |
8. |
Regeneration |
再会 |
……………… |
104 |
9. |
The Book of Amun Ra |
アメン・ラーの書 |
……………… |
122 |
10. |
The Escape |
脱出 |
……………… |
134 |
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■コラム
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ミイラの作り方 |
……………… |
32 |
「スカラベ」は聖なる昆虫 |
……………… |
70 |
10の災い |
……………… |
88 |
巨石文明 |
……………… |
120 |
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■リスニング難易度
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評価項目
| 易しい(1) → 難しい(5)
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・会話スピード
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・発音の明瞭さ
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・アメリカ訛
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・外国訛
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・語彙
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・専門用語
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・ジョーク
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・スラング
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・文法
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合 計 |
20点 |
( 16以下 = Beginner, 17-24 = Intermediate, 25-34 =
Advanced, 35以上 = Professional )
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