13デイズ
THIRTEEN DAYS


監修 曽根田憲三
翻訳・解説 曽根田憲三/曽根田純子/長広見/及川学/及川一美/大塚光子
編集 二村優子/LONG "MARTIN" MAI
A5判 200頁、ISBN4-89407-257-2
本体価格=1,200円(税別)
2001年(平成13年)10月10日 初版発行


世界中を核戦争の恐怖に震え上がらせた1962年の事件「キューバ危機」を、ドキュメンタリー風に描いた作品。緊迫感あふれるストーリーで、2時間半の長編の最後まで観客をグイグイとひっぱていってくれます。政治・軍事の専門用語が多く、英語はかなり難しいですが、是非挑戦してみてください。

書 籍 紹 介
 
映 画 紹 介
書 名 スクリーンプレイ
「THIRTEEN DAYS
        13デイズ」
製 作 2000年
監 修 曽根田 憲三 会 社 BEACON COMMUNICATIONS
仕 様 A5版、200ページ 監 督 ROGER DONALDSON
発行日 2001年10月10日 脚 本 DAVID SELF
出版社 株式会社 スクリーンプレイ 出 演 KEVIN COSTNER
定 価 本体1,200円(税別) BRUCE GREENWOOD
ISBN 4-89407-257-2 STEVEN CULP

 

■この映画のストーリー

 キューバ革命に成功して首相の座に就いていたフィデル・カストロの弟で陸軍長官のラウルが1962年7月2日にモスクワを訪れてから、キューバの港におびただしい数のソビエトの貨物船が入港するようになっていた。積み荷の中身は分からなかったが、多くのロシア人技術者が乗り込んでおり、8月の末までには5,000人にも及ぶロシア人がキューバの地に足を踏み入れていたのである。ちょうどこの頃、キューバを逃げ出し、フロリダ州オパ・ロッカにたどり着いていた亡命者からの噂を耳にしたニューヨーク州選出の上院議員ケネス・キーティングは、10月10日に行った演説で、キューバに6基の中距離ミサイル発射台が建造されつつあると語った。しかし、政府はキーティングの言葉に懐疑的だった。ソビエトはワルシャワ条約に加盟している西側諸国に隣接した東欧の衛星国にさえミサイルを配備したことなどなかったからだ。ましてやソビエトが余り重視しているとは思えない遠く離れた小さな島国であるキューバに、フルシチョフがわざわざ危険を犯してまで攻撃用兵器を運び込むとはとうてい考えられなかった。実際、キーティングの発言に関してABCテレビのエドワード・モーガンとジョン・スカリからインタビューを受けた国家安全保障担当の大統領特別補佐官マクジョージ・バンディは、その可能性をキッパリと否定している。
 そうした楽観論が支配するワシントンで、キューバの不穏な動きを感じ取っている人物が1人いた。それはCIA長官のジョン・マコーンであった。10月4日、キューバ偵察の必要性を感じていた彼の要求により、10日後の10月14日に偵察機U-2による島全体の写真撮影が行われた。パイロットの帰還と同時に撮影されたフィルムはすぐさまペンタゴンの写真解析センターに送られ、専門家たちによる分析が始まったのである。その結果は驚くべきものだった。サン・クリストバルにほど近い密林が切り開かれ、弾道ミサイルそのものはなかったものの、ミサイル運搬車、組立機、発射装置が確認されたのである。10月15日午後8時30分、CIA副長官から連絡を受けた、フランス大使チャールズ・ボーレンの晩餐会に出席していたバンディは、翌日から始まる危機に備えて大統領にはゆっくりと一夜を過ごしてもらおうと考えてその夜の報告は控え、翌朝の10月16日火曜日、寝室で朝刊を読んでいた大統領を訪れて、恐るべきニュースを伝えた。
 この映画は実際にケネディ政権に突如として襲いかかり、政府要人たちを震撼させ、アメリカ国民を恐怖に陥れたのみならず、世界を核による絶滅の瀬戸際まで追いつめた現代史の1ページを飾るキューバ危機と、それに対する迅速な対応を迫られたケネディ政権の混乱ぶり、ならびに解決に向けての彼らの必死の取り組みを描いたものである。物語はキューバ上空でU-2機の撮ったミサイル基地が建設されつつある様子を映し出した一枚の写真から起こる激震から始まっている。ソビエトが中距離弾道ミサイルをキューバに密かに運び込んでいる確かな証拠を提示され、ミサイルが作動可能になるのも時間の問題だと聞かされたケネディ大統領はただちに実弟で司法長官のロバート、およびロバートとハーバード大学時代のルームメートで、現在大統領特別補佐官を務めているケネス・オドネルをはじめとする政権内のブレインに号令をかけ、国家安全保障会議実行委員会、いわゆるEXCOMを召集し、対応策の検討に入る。だが、そんな中、新たに持ち込まれた証拠写真はさらに背筋が凍りつくようなものだった。射程距離の長い中距離弾道ミサイル40基が建造されつつあるというのだ。これはソビエトが保有するすべてのICBMのおよそ半数にあたるものであり、もしこれらが発射されればシアトルを除くアメリカ合衆国全土が数分のうちに消滅してしまうのである。もはや一刻の猶予も許されないと考えた好戦的な統合参謀本部長マクスウェル・テイラー、空軍司令官カーティス・レメイは武力によって速やかにミサイル基地を排除する必要があると述べて、空爆を強く主張する。それを聞いた大統領はその場合にソビエトはどう出るかとレメイに反問。特に反応しないと断言するレメイに大統領は首をかしげ、「アメリカがソビエトの兵士を殺せば、必ず何らかの報復措置をとってくるはずだ」と語り、彼を窘める。アメリカ国連大使アドレイ・スティーヴンソンから交換条件を申し出てはどうかといった案が出される。グアンタナモ基地を手放し、トルコにあるアメリカのミサイルを撤去する代わりにキューバのミサイルをソビエトに持ち帰らせるというものだ。だが、この融和策は彼らを図に乗らせるだけでなく、世界の国々の目にアメリカが弱腰と映ってしまう。これといった名案も浮かんでこず、誰もが頭を抱えていたときに、国防長官のロバート・マクナマラからキューバの海上封鎖という案が出された。空爆という奇襲でちっぽけな島国を吹き飛ばし、石器時代に引き戻すのはアメリカの伝統にそぐわないと考えたロバート・ケネディは、この案にもろ手を上げて賛成する。海上封鎖とはキューバ沖800マイルの海上でアメリカ海軍がソビエトの貨物船を止め、積み荷を検査して、兵器を積んだものがあれば全て引き返させるというものだ。何日にもわたる緊迫した雰囲気のなかで、武力行使を主張する軍関係者と穏やかな路線を主張するケネディたちの激しいせめぎあいの末に、海上封鎖の線で行くことに決定。それを受けてケネディ大統領は10月22日月曜日午後7時からテレビを通じて「キューバから西半球のいずれかの国に対して核ミサイルが発射された場合はいかなるものであれ、アメリカに対するソビエトによる攻撃と見なし、ソビエトに対する全面的報復措置を取る」と、アメリカ国民に訴え理解を求めるとともにフルシチョフに警告を発し、米州機構の合意を取りつけるや、水路交通遮断の実力行使に出るのであった・・・。
 『13デイズ』(Thirteen Days, 2000)はケネディが密かに録音していたEXCOMの会議の模様と執務室での電話のやりとりのテープを、Ernest E. MayとPhilip D. Zelikowが書き起こして出版したThe Kennedy Tapes: Inside the White House During the Cuban Missile Crisis(1997)をベースに、数多くの政府公開文書を参考にしてDavid Selfが執筆した脚本を使い、『カクテル』(Cocktail, 1988)や『スピーシーズ/種の起源』(Species, 1995)などのヒット作を次々と世に送り出してきたオーストラリア生まれのRoger Donaldsonがメガフォンを握って制作したものである。主演はケネディ兄弟の側近として事件の推移を見守るケネス・オドネルを好演したKevin Costner、多くの批評家からこの映画の成功は彼にあると讚えられたケネディ大統領を演じた『ダブル・ジョパディー』(Double Jeopardy, 1999)のBruce Greenwood、そして容貌、仕草ともにロバート・ケネディに酷似しているとして話題を呼んだTVドラマで活躍中のSteven Culpである。
 20世紀に人類が直面した最大の危機の1つと、緊迫した状況の中で解決を模索していく極限にまで追いつめられた人間たちの熱いドラマを、壮大なスケールで描いた2000年制作の政治スリラーの最高傑作である。
曽根田 憲三(相模女子大学教授)

■この映画の英語について

 この映画は実録ドラマであるが、一種の極限状況の中で生きている人間の日常的な心理や感情を表現するような会話表現も楽しめる映画である。
 この映画の中で使われている英語は全体的に政治的、実務的な表現が多いので、時事英語(特に政治、国際関係)に興味のある人や会議英語、通訳等に興味のある人にはお勧めの映画である。発音は極めて洗練されており、スラングも少なく、文法的に理解し易いので、特殊な軍事用語と歴史的な背景に関する予備知識が多少あれば、英語力を伸ばすための教材としては極めて理想的なものといえるだろう。
  また、ケビン・コスナー演じる大統領側近、オドネルは、社会的には政治的であり、大統領に忠実を尽くす側近であり、職場では極めて散文的、実務的、政治的会話を交わす男であるが、家庭では平凡な中流家庭の父親として家族と交わす人間的な会話の対比が面白い。
〈家庭での平凡な日常会話〉
"Dad, will you sign my permission slip for tomorrow?" "Give it to your mother." "Your mother's arms are full." "You got time for pancakes?" "Give us another one, Dad." "All right." "Gotta go. Be good."
 これは現代社会に生きる我々にもある面では共通するものだが、世界が核戦争に直面し、キューバ危機の真っ最中という極限状況であるが故に、人間愛が新鮮に描かれた夫婦間の日常会話が印象に残るのではなかろうか。 〈夫婦の会話〉
"You look old, O'Donnell." "You don't." "It's 2:30 in the morning. Are you flirting with me?"
 この映画の中で学ぶ英語は一言で言えば、一方では政治、軍事、であるが故に実務的であり、客観的、科学的な英語表現であり、他方では極限状況に置かれた人間の極めて人間的、主観的、感情的な英語表現であると言えるだろう。
 この映画を理解するのに必要な軍事、政治に関する単語、イディオムは次のようになる。予め知っていると便利である。
administration/ loyalty/ medium-range ballistic missiles/ Secretary of Defense/ military installation/ first strike policy/ hemisphere/ diplomatic consequences/ surgical air strike/ retaliate/ treaty commitment/ invasion/ spectrum/ 3-megaton nuclear warheads など。
小池 直己(相模女子大学教授)

■目次

1. Kenny O'Donnell ケニー・オドネル ……………… 8
2. Missile Crisis ミサイル危機 ……………… 24
3. The Chiefs 参謀本部 ……………… 44
4. A Nation in Warning 警戒態勢突入 ……………… 64
5. It's up to the Navy 海軍次第 ……………… 84
6. Quarantine 海上臨検 ……………… 106
7. Adlai the Appeaser 譲歩屋アドレイ ……………… 120
8. Papa Spy 親玉スパイ ……………… 146
9. Peace Negotiations 和平交渉 ……………… 160
10. World Peace 世界平和 ……………… 178

■コラム

John Fitzgerald Kennedy ……………… 42
Robert Francis Kennedy ……………… 82
1962年 ……………… 104
ケネディ兄弟の父 ……………… 144
映画の中の大統領 ……………… 192

■リスニング難易度

評価項目 易しい(1) → 難しい(5)
・会話スピード
1 2 3 4 5
・発音の明瞭さ
1 2 3 4 5
・アメリカ訛
1 2 3 4 5
・外国訛
1 2 3 4 5
・語彙
1 2 3 4 5
・専門用語
1 2 3 4 5
・ジョーク
1 2 3 4 5
・スラング
1 2 3 4 5
・文法
1 2 3 4 5
合 計 29点

( 16以下 = Beginner, 17-24 = Intermediate, 25-34 = Advanced, 35以上 = Professional )