米海軍パイロットのトップ1%を養成する訓練学校、トップガンに配属かなったマベリックの将来は前途洋々であった。だが彼の自分の操縦技術への自信から、時としてその無謀さが危険な状況を招くことに、教官や仲間は日頃から不安を抱いている。そんな訓練生マベリックと美人教官チャーリーの間に恋が生まれた
しかしある日、訓練中にマベリックと親友グースの乗る戦闘機が墜落事故を起こし、脱出に失敗したグースは事故死した。強く自責の念を感じた彼はトップガンを去ろうとするが、バイパー教官の勇気づけで、晴れの卒業式に出席する。その日、突然、領海侵犯した敵機ミグを撃退すべく緊急指令が降りる・・・
1986年全米で大ヒットしたこの映画は、'82年の「愛と青春の旅立ち」の空軍版とも言え、日本でも若者を中心に超大ヒットとなった。公開の翌年のことだが、私の受け持ちの高校2年生の生徒達に、授業で取り上げて欲しい映画のアンケートを取ったところ、第1位がこの「トップ・ガン」だった。
この映画の魅力を探ってみよう。母艦から飛び立つ戦闘機、揺れ動くコックピット内、ハラハラドキドキで、思わず力が入ってしまう空中アクション、まるで自分が戦闘機にのっているかのような臨場感は、観客を容易に異体験の世界に導く。そして、まだ少年の面影を残すトム・クルーズが、そのイメージにぴったりのやんちゃで向こう見ずなパイロットを演じている。正に彼はマベリックに適役である。
"Cruise keeps the movie at full throttle." とは、ピープル誌のピーター・トラバース氏の評だが、クルーズの持つ「元気」がスピード感を持ち味とするこの映画にぴったりマッチしている。この映画で彼はハリウッドの若手スターの第一人者となった。娯楽作品なので、ストーリーは安易に流れている感じは否めないし、アメリカ海軍の宣伝のような戦闘の美化にも抵抗がある。が、しかし、テンポの速い展開と効果的なBGMに乗せられ、最後には主人公がキャリアも恋も勝ち取るハッピーエンドは、理屈抜きに、見る者に元気を与えてくれる。
映画には国民性がよく表れるが、この映画もアメリカンスピリッツの代表的なものと言えるだろう。つまり、一つには戦争でも、ビジネスでも、恋愛でも、何でも勝利したいというアメリカ人気質だ。映画の中で、"Best
of the best"(最高の中の最高)という言葉が何回も出てくるが、最後に主人公がそれを手に入れるアメリカ人好みのサクセスストーリーが展開される。もう一つは、困難にぶつかった時の彼らの行動である。この映画では、相棒のグースの死の場面だが、困難に負けてしまうのではなくて、それが大きければ大きいほど、その困難をバネにして大きく成長しようという彼らの方向性がここでもうかがえる。映画は正しくその国民性を学ぶのに格好の教材である。
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