トレインスポッティング
TRAINSPOTTING


英文構成 株式会社スクリーンプレイ編集部
編集 池下裕次/BETH POLLARD
A5判 160頁、ISBN4-89407-216-5
本体価格=1,200円(税別)
1999年(平成11年)2月16日 初版発行


ヘロイン中毒のレントンは、悪友たちの中でドラッグ漬けの生活から抜け出すことができるのか? ダニー・ボイル監督がスタイリッシュな映像で現代の問題を軽妙に、ドライに描く。有名アーティストが総出演のサントラも大ヒットした。英語はアイルランド訛りがきついので、かなり難しい。

書 籍 紹 介
 
映 画 紹 介
書 名 スクリーンプレイ
「TRAINSPOTTING
  トレインスポッティング」
製 作 1996年
編 集 池下 裕次、BETH POLLARD 会 社 CHANNEL FOUR
TELEVISION CORPORATION
仕 様 A5版、160ページ 監 督 DANY BOYLE
発行日 1999年2月16日 脚 本 JOHN HODGE
出版社 株式会社 スクリーンプレイ 出 演
EWAN MCGREGOR
定 価 本体1,200円(税別) JONNY LEE MILLER
ISBN 4-89407-216-5 KEVIN MCKIDD

 

■この映画のストーリー

 ここはスコットランドのエディンバラ。ヘロイン中毒のレントンは、仲間と集まり、ドラッグ漬けになっている。アル中でケンカ好きのベグビー、気弱なスパッド、007オタクで女たらしのシック・ボーイ、イギー・ポップとフットボールを愛するトミー、中学生には見えない大人びた姿でクラブへ出かけるダイアン、そんな彼らと繰り広げるはちゃめちゃな日々。仕事をせずに失業手当をもらい、ドラッグの資金欲しさに盗みを繰り返し、ドラッグがなければ女に走るという、一見先の見えない堕落した生活だが、本人たちはいたって陽気で前向きだ。
 ある時レントンはドラッグの過量摂取で危険な状態になる。それがきっかけとなり、彼は必死の思いでドラッグを絶ち、単身ロンドンへ行って生活を一変させる。やっと落ち着いた生活を手に入れたのもつかの間、仲間たちはそんな彼を放っておくはずがなく、彼の部屋に居着くようになる。心の中で彼らを軽蔑しつつ、追い返すこともできないレントンは、友人の死がきかっけで、結局またエディンバラへ戻ることになってしまう。そんな時、大きな麻薬取引をものにできるチャンスが彼らにやってくる。このチャンスをつかめば、今の生活から抜け出せる。一行は期待と不安を胸にロンドンへ向かうのだった。きわめて冷静に仲間を見続けてきたレントンが最後に下した結末は、友情とは何なのだろうか、人生をどう生きるのか、そんなことを考えさせる。失業、ドラッグ、AIDSなど、シリアスな現代の問題を、明るく、軽快に描いたイギリスの大ヒット青春映画である。
 原作は、この小説で衝撃デビューを果たしたイギリスのアーヴィン・ウェルシュ。作者自身がこの作品の舞台となっているスコットランドのエディンバラ出身で、作品の中にドラッグ中毒だった自分自身のエピソードも多く含めている。映画の中で、ドラッグの売人、マイキーの役で出ているのが彼である。映画も過激だが、原作はそれ以上だ。登場人物、ドラッグや性、死など、描写が実に現実的で生々しい。原作も読むと、さらに深く映画を楽しむことができる。現在イギリスは、低賃金で、失業者が多いため、逆に失業保険がしっかりしており、仕事をしなくても、最低限の生活資金が手に入る。また、若者のドラッグ経験者の割合も非常に高い。日本では非日常の世界で、かなり衝撃的にも見えるが、イギリスで、クラブなどでたむろする若者には、この作品の登場人物に近い生活をしているものも多いのだろう。この原作は、出版されてからイギリス国内でベストセラーとなり、まず舞台化された。舞台版『トレイン・スポッティング』では、本作ではスパッドを演じているユエン・ブレナーが主役のレントンを演じた。そして映画となるわけだが、イギリスはもとより、アメリカ、そして日本でも大ヒットとなった。
 この映画のヒットの要因は、何といってもそのファッション性にあるといえるだろう。ドラッグを美化しているとの反論もあるぐらい、この映画はおしゃれな作品になっている。映像はもちろんのこと、音楽、ファッション、広告デザインにいたるまで、しっかりと若者の流行にのっているのだ。音楽では、「ブリット・ポップ」と言われるUKアーティストや、大御所のイギー・ポップなどが参加。ストーリーと絡んだ音楽が使われており、軽快な映画のテンポを盛り上げている。選りすぐりの曲が満載なので、サウンド・トラックだけでも必聴だ。また、レントンたちが着ている服は、今ロンドンで流行している FREEと、MODZARTのもので、ドラッグですさんでいるわりにかっこ良く見えるのは、この服のせいだともいえる。そして、タイトルバックのデザインは、TOMATOという、現在多くの広告デザインを担当しているイギリスのデザイン集団によるものである。映画を見たことがなくても、ポスターやビデオでおなじみの、ユアン・マクレガーがびしょ濡れで立っている姿は見たことがあるといった人は多いはずである。
 原作を映画化し、大ヒットさせたのは、イギリスの舞台・テレビを経て『シャロウ・グレイブ』で映画デビューしたダニーボイル監督、製作のアンドリュー・マクドナルド、脚本家のジョン・ホッジの3人。実は、『シャロウ・グレイブ』の後、ハリウッドから、『エイリアン4』などの、ビッグプロジェクトのオファーがあったのだが、これを断って作ったのがこの『トレイン・スポッティング』で、結局映画は大ヒットした。このトリオの製作スタッフと主演ユアン・マクレガーの関係は『シャロウ・グレイブ』に続き、この『トレイン・スポッティング』が2作目。日本で1998年夏に公開された『普通じゃない』で、同じメンバーで遂にハリウッド進出を果たしている。これらの作品で演技派俳優として注目を集めたユアン・マクレガーは、『スター・ウォーズ』(1999)の新シリーズ三部作では、若き日のオビ・ワン・ケノービ役を演じる大役を射止め、ますます今後の活躍が期待されている。
 ケンカ好きのベグビーは、ロバート・カーライルが演じ、彼はこの翌年『フル・モンティ』(1997)で英国アカデミー主演男優賞を獲得している。007オタクのシック・ボーイに扮するのはジョニー・リー・ミラー。祖父が007シリーズのM役で有名なバーナード・リーという噂もあったが、これはガセネタであったらしい。ませた女子中学生ダイアンは、14才に見える19才(撮影時)のケリー・マクドナルドがオーディションで選ばれた。
二村 優子

■この映画の英語について

 イギリス英語(正確にはスコティッシュだが)に慣れていない人が聞くと、「この映画はいったい何語でしゃべっているのだろう、英語だと思うんだけど」、というぐらいの感想を持たれるに違いない。とくにベグビーなどはアメリカ人のネイティブ・スピーカーでさえ、何度も聞かないと聞き取れないというようなところもあったほどである。主な登場人物のうちシック・ボーイを演じたジョニー・リー・ミラー以外は、スコットランドの出身というから、その訛りも完璧である。  さて、そんな英語を楽しむにはどうすればいいのか。基本的に慣れるしかないの一言につきてしまうのだが、まずは比較的に簡単なレントンのナレーション部分などから始めると良いだろう。続いて、トミー、シック・ボーイ、ダイアンの発音が聞き取り易い。ベグビーや、面接時のスパッドのセリフなどは大変聞きづらいので、聞き取れなくても落ち込むことはない。日本語でもきつい方言が聞き取れなかったりするのと同じである。
 スコットランド独特のスラングも簡単に紹介しておこう。頻繁にこの映画で使われるのは shite と cunt である。shite はアメリカ英語で言う shit のこと。アメリカ映画では shit がよく使われるのと同じように、この映画でもいろんな意義で使われている。もうひとつの cunt は「女性性器」の意味がある卑語で、アメリカでは会話で使われることはほとんどないが、本作では「あいつ、人」の意で多用されている。しかし、理解をするために知っておいた方がいいということであって、とくに cunt なんて女性の前で言って、はり倒されてても責任は持てませんのであしからず。    もうひとつこの映画で注目して欲しいところがある。シック・ボーイとレントンがショーン・コネリーの真似をするところで、"Do you see the beast? Have you got it in your sights?" といったセリフを "Do you shee the beasht? Have you got it in your shightsh?" のように発音している。これはスコットランド訛りではなく、実はショーン・コネリーには若干の言語障害があり、s の発音が sh の発音になってしまうからで、彼らはそれを大げさに表現しているのである。
 どちらかと言えば、BBCよりもCNNの方が聞き取りやすく、BBCも聞き取れるようになりたいといった方に、この映画を見た後に、BBCを見ることをお薦めする。BBCの英語が驚くほど聞き取りやすく感じられるはずである。
池下 裕次

■目次

1. Relinquishing Junk 禁ヤク ……………… 8
2. Mates 仲間 ……………… 26
3. Relationships 関係 ……………… 44
4. Getting Back on Heroin ヘロイン再開 ……………… 60
5. The Addiction 中毒 ……………… 72
6. The Overdose 過量摂取 ……………… 86
7. Sickness 禁断症状 ……………… 100
8. New Life 旅立ち ……………… 114
9. Tommy's Funeral トミーの葬式 ……………… 130
10. True Mates 真の友 ……………… 142

■コラム

製作スタッフ ……………… 42
ショーン・コネリー ……………… 58
007シリーズ ……………… 70
イギリスとスコットランド ……………… 98
ドラッグのお話 ……………… 112
トレインスポッティング ……………… 156

■リスニング難易度

評価項目 易しい(1) → 難しい(5)
・会話スピード
1 2 3 4 5
・発音の明瞭さ
1 2 3 4 5
・アメリカ訛
1 2 3 4 5
・外国訛
1 2 3 4 5
・語彙
1 2 3 4 5
・専門用語
1 2 3 4 5
・ジョーク
1 2 3 4 5
・スラング
1 2 3 4 5
・文法
1 2 3 4 5
合 計 31点

( 16以下 = Beginner, 17-24 = Intermediate, 25-34 = Advanced, 35以上 = Professional )