WALL STREET

ウォール街



書 籍 紹 介
映 画 紹 介
書 名 スクリーンプレイ
「ウォール街」
製 作 1987年
編 集 山田 均 会 社 Twentieth Century Fox
仕 様 A5版、120ページ 監 督 Oliver Stone
発行日 1987年2月 脚 本 Stanley Weiser
Oliver Stone
出版社 株式会社スクリーンプレイ 出 演
Michael Douglas
定 価 本体1,200円(税別) Charlie Sheen
ISBN 4-89407-084-7 Daryl Hannah

この映画のストーリー
 マイケル・ダグラスが演じるゴードン・ゲッコー、チャ−リ−・シーンのバッド・フォックス、これらの2人の名前は既に英語文化圏の人たちには映画の筋立てを予想させるものである。主人公の bud は新芽や新生を意味するし、心安い者同士の呼びかけの buddy をも連想させる。そして、fox はずるがしこいが結局はそれゆえに痛い目に遭うのである。一方、ゲッコーという名は、既に冷血なひびきをもっている。虫を食うヤモリを意味する gecko と同音なのである。因に、この人物には実在のモデルがあったとされている。舞台は、世界経済の中心、1980年後半のニューヨーク・ウォール街。そこでこの2人の人物はマネー・ゲームを繰り広げる。
 若い証券マンのバッドは、新米ながら野心家で、アメリカン・ドリームを地でいっている大資産家のゲッコーにやっとの思いで取り入った。バッドは、父親の会社・ブルースター航空の情報を流すことで歓心を取りつけたのだ。ゲッコーの住む上流階級の世界は、労働者の家庭に育ったバッドにはただただ眩しかった。成功する為には手段を選ばないことを、ゲッコーから学んだ。会社内でも私生活でも面白いように物事が展開した。美しいインテリア・デザイナーのダリアンと豪華なペントハウスで夢を語り合い、ブルースター航空の再建問題では自分の意見がゲッコーに受け入れられた。労働組合の責任者の父は不審を顕にし協力的ではなかった。貧乏で思い通りにならない父を軽蔑し憎みさえした。しかし、ゲッコーの狙いは口にしていた会社再建などではなく、大儲けだけだったと知らされた。初めて自分が利用されていたと気づいた時、父の心臓発作の知らせが届いた。働く仲間のことを常に考えていた父の生き方にやっと共鳴できた彼は、ゲッコーと対決する決心をし、実行した。ダリアンは離れていき、彼はインサイダー取引で逮捕もされた。仮出所して、ゲッコーに会うバッド、だが彼はただ殴られるだけではなかったのだ。
 堅苦しくなりがちなテーマをテンポよく、適切な配役と豪華な背景を用いてわかりやすい切り口で料理した、息をもつかさない映画である。ウォール街の株式仲買人を父に持つ、オリバー・ストーン監督がこの映画で問いたかったのは何か。父子の愛、男女の愛、資本主義社会の厳しさ、アメリカン・ドリームのはかなさ、それともアメリカのモラリティか。空前の活況を呈していたウォール街を通して、何に価値をおいていきるべきかを問いたかったのではないだろうか。

この映画の英語について
 日本でいえば兜町とも言えるアメリカのウォール街が舞台となっているだけに、証券業界・実業界に関する専門用語が多様されている。この道のプロがコンサルタントとして参加しただけのことはある。しかし insider trading (インサイダー取引)や dog (うま味の無い投資)や SEC (Securities and Exchange Commission 証券取引委員会)など、これらの専門用語はこの映画が発表されるほんの1、2年前に新聞紙上をにぎわせたので、一般になじみのある語となっていた。この事実がなければ、おそらく一般の人々にとってニューヨークのウォール街は遠い存在で、映画のこれ程の成功は見られなかったのではと思われる。また、スラングの多さという点でこの映画も例外ではないので、アメリカで日常使われている表現に接し慣れることができる。
 一方、この映画は社会や家庭での人間関係の感情を表す表現の宝庫でもある。セリフの随所にゲッコーの軽妙で独特の語り口が光る。特に、ゲッコーの株式総会での自身に満ちたスピーチは圧巻である。難解な用語を使わずに親しみを込め、具体例を挙げてのパフォーマンス。彼の短いスピーチを通じて、説得力のあるスピーチとはこのように行うのかと感心させられてしまう。その言葉の巧みさと語り口、そこに彼のカリスマ性の恐ろしさが端的に現れているようだ。彼はまた洒落た独自の言い回しをする。説得や時に浴びせる強烈な罵倒にすら言葉への研ぎすまされた感覚がみられ、バッドの父親のストレートさとは好対象となっている。
 また、人間の成長や人間関係の変化に連れて、呼びかけの口調や話し方が変化していることにもぜひ注目したい。バッドは始めは紋切り型の営業口調であり、顧客との人間関係も先輩たちとは異なり、新米であるということが話し方や言葉からも察せられる。また、ゴードンとの関係は、Mr. Gekko という呼び対等に意見を述べるなど変化が見られる。英語に敬語表現が無いなどということは決してなく、実社会ではフランクながらも上下の人間関係が言葉に出ていることが明瞭に見て取れるのもこの映画の面白さであり、実際に英語を使う時に大いに参考になる。また、バッドと恋人や同僚との間の洒落た会話の中にヤッピーと呼ばれた人々の都会的ではあるがやや浮薄な精神生活と、1980年代のニューヨークの流行が、かいま見られて興味深い。

[ Listening Ability Evaluation ]
スクリーンプレイ編集部の「リスニング難易度」評価一覧表)

評価項目 易しい → 難しい
・会話スピード
1 2 3 4
・発音の明瞭さ
1 2 3 4
・アメリカ訛
1 2 3 4
・外国訛
1 2 3 4
・語彙
1 2 3 4
・専門用語
1 2 3 4
・ジョーク
1 2 3 4
・スラング
1 2 3 4
・文法
1 2 3 4
合 計 23点

( 14以下 = Beginner, 15-18 = Intermediate, 19-22 = Advanced, 23以上 = Professional )